商標法と不正競争防止法の関係性
商標に関する事件で、商標法とは別に不正競争防止法で争うケースがあります。
今回は商標法と不正競争防止法の関係についてみていきます。
商標法・不正競争防止法とその関係性
商標法とは商標の登録の手続や商標権の内容を定めたもので、商標権の権利が及ぶ範囲は「登録商標と同一または類似する標章を登録商標が指定する商品・サービスと同一または類似する票品・サービス」です。
一方、不正競争防止法は、不正行為によってうける経済的不公平を解消するためのものです。商標との関係でいうと、以下が当てはまります。
- 未登録商標の商標であっても有名な商標であれば保護される
- 登録商標に関して、商標権の範囲を超えた保護が可能
ただし不正競争防止法での保護をうけるためには、ある程度「有名なもの」が商標である必要があります。
トンカツ屋「勝烈庵」事件で見る、不正競争防止法の性質
例えば、不正競争防止法の性質を知るのに有名な事件で「勝烈庵」事件というものがありますので紹介します。
事件の主役のAさん。Aさんは「勝烈庵」というトンカツ屋を始め、地元で有名なお店に成長させました。そんな中、Aさんの店の近隣地域にBさんが「かつれつ庵」というトンカツ屋を開店、またAさんとは別の地域ではCさんが「かつれつあん」というトンカツ屋を開店させました。そこでAさんは、BさんとCさんの店に対し、店名に「かつれつ庵」「かつれつあん」を使用するのは、不正競争に該当するので店名の使用を止めるよう求め裁判を起しました。
裁判の結果は、Bさんの「かつれつ庵」に対しては使用の差し止めがみとめられ、Cさんに「かつれつあん」には使用の差し止めが認められませんでした。このようにBさんとCさんとで扱いが異なった結果になったのは、不正競争防止法の適用要件の違いのためです。
不正競争防止法で商標などの営業表示を保護する場合、商標同士が「似ている」という事の他にその「商標が有名」で「相手方の表示と混同のおそれがある」という要件が必要になります。これを勝烈庵事件にあてはめると、Aさんの「勝烈庵」とBさんの「かつれつ庵」、Cさんの「かつれつあん」はいずれも「カツレツアン」と読め、似ている商標であるという事ができます。ただ「商標が有名」で「相手方の表示と混同のおそれがある」という要件についてはBさんの地域とCさんの地域では差がある判断されました。
つまり、Aさんの店のある地域で「勝烈庵」はトンカツ屋として有名であるので、その近隣地域でBさんが「かつれつ庵」というトンカツ店をする事は、消費者がAさんの店とBさんの店はなんらかの関係のある店だと混同する恐れがあると判断されたのです。一方Cさんの店はAさんの店の地域とは異なる地域にあり、Cさんの地域で「かつれつあん」の店名でトンカツ屋を営業しても、これをAさんの「勝烈庵」と混同する恐れはないと判断されたのです。
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