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商標がおよぼす効力としての「専用権」と「禁止権」

2つの大きな権利

商標は、企業社会の公平な競争を促進し、健全な発展を実現することで消費者が品質の高い商品や役務(サービス)を受けることを可能にするためにある法律です。

 

企業が出願する商品や役務の呼称や記号・マークなどを特許庁への登録制とすることで、その権利を法的に保護し、あるいは権利の範囲を法律によって限定し管理することを目的としています。 商標は、小説や絵画などの著作権とは異なり、あくまでも産業上のおける権利であることが前提となっているのです。

そのようなバックグラウンドを持つ法律だけに、商標法には権利者に対して絶大な権利を与えており、この権利は「専用権」と呼ばれています。そして同時に、登録された商標に類似するマークなどを商標権利者以外が使用することを禁ずる「禁止権」も有することになっています。

 

つまり、一度特許庁に登録された商標の権利者には、その商標を独占する「専有権」と、登録商標に類似したものを使用させない「禁止権」という、2種類の大きな法的権利を持っているということになるのです。

「専用権」と「禁止権」の内容

企業が商標を出願し登録する際には、この「専用権」と「禁止権」を明確に把握しておく必要があり、現在日本で係争まで発展している商標トラブルは、商標法を構成する「専用権」および「禁止権」という2つの規定を深く理解していないことに起因するものが大半を占めています。

 

商標法が定める「専用権」とは、指定商品(役務)の区分に登録された商標を、商用として利用する一切の権利を独占するという権利のことです。そしてこの権利は10年ごとに更新することが可能であり、更新し続ける限り半永久的に権利を持続させることができます。 商標に関しては出願人を法人とすることができるので、権利者たる法人が存続する限り、何十年でも何百年でも専有権は継承されるということになります。

 

また、権利者が商標権を第三者に譲渡したり、ライセンス契約を締結して商標を他人に使用させることも可能です。 そして商標法が規定する「禁止権」とは、登録商標の呼称や外観そして商標から類推される意味などが類似したものを他人が商用に用いることを禁止する権利です。

 

特許を含めた商標などの工業所有権や著作権は、一般に知的財産権と呼ばれます。同じ財産であっても金銭や不動産などは「現物そのもの」に対する所有権であって、いくら類似したものでも現物とは違うものであれば当然ながら権利を主張することはできず、他人の財産に関してその所有を禁ずることはできません。知的財産と一般的な物的財産の根本的な違いはここにあるといってよいでしょう。

知的財産権としての商標

商標など商品に付与する文字やマークは、あくまで人間の想像力から生み出されたものであり、金銭や土地・建物などそれ自体が取引できる形あるものではありません。 物的財産よりも著作権などの知的財産権に属するものが商標であり、形がないゆえに、真似されることによって生じる権利者の不利益を保護するために「専用権」とは別に「禁止権」が設けられていると解釈すべきなのです。

 

商標における「禁止権」は、20世紀以降に先進国で生まれ体系化されてきた知的文化という側面があります。グローバル化が進む現代では、知的財産に関する権利意識が希薄な発展途上国の「模倣」という問題がクローズアップされており、日本でもアジア諸国におけるファッションブランドの模倣やアニメ作品などの海賊版問題などの続発によって、商標の権利が阻害され莫大な損害をこうむるという実害に悩まされています。

 

発展途上国に「商標の模倣は財産の窃盗に相当する」という意識が常識化するために、日本を含む先進諸国は商取引と同時に知的財産権の本質を途上国に浸透させる努力をはかる必要があるでしょう。

 

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