相次ぐ中国の模造ブランド品による商標違反
アジア各国から輸入される有名ブランド品は年毎に増加傾向にあり、これに並行して外国から日本に輸入されてくる模造品の数もなかなか歯止めがかからずに増え続けています。2017年は1年間で商標権の侵害に該当し輸入差止となった違法物品が実に3万111件にものぼり、前年比で17.3%増となりました。
3万件を突破したのは3年ぶりで、統計がとられるようになった1987年以降では2番目に多い数でした。今回は、怒涛のように日本に押し寄せる模造ブランド品の問題点を浮き彫りにしてみましょう。
輸入差止3万件の90%以上が中国から
輸入差止措置が1年で3万件ということは、1日平均で84件弱の計算となり、その数の多さには驚かされます。商標法に抵触する模造ブランド品の内訳は、財布などを含むバッグ類が約42%で最も多く、次が衣服類で約15%、シューズ類が約13%と続きます。これらは、高級ブランドの定番として以前から多かった品々ですが、最近では日本の「ゆるキャラ」ブームが海外に飛び火した影響からか、キャラクターグッズなどのコピー品の増加が目立ってきているようです。
いかに取締りを強化しても、海外の悪徳業者にとっては「高級ブランドのコピー商品は確実に儲かる商売アイテム」という誘惑は容易に断ち切れない現実があるようです。そして最大の問題は、3万件以上にもおよぶ違法コピー商品のなんと90%以上が中華人民共和国からのもので、実に8年連続で90%を超えているという異常な事実です。
犯罪意識が希薄な商標違反
麻薬や大麻などの輸出入に関して、中国では日本よりも法的規制が厳しい現実があり、当局が逮捕した犯罪者は死刑を含む重い刑罰が科せられる厳罰主義で臨んでいます。しかしながら、コピー商品など商標違反の犯罪に関しては、中国は欧米日などの先進国に比較して国家自体に知的財産権の遵守意識が希薄なせいか、「手軽に稼げる商売で罰則もそれほど重くない」という誤った認識が違反者に植え付けられているようです。
このように、こと知財に関しては、中国では官民共に違法行為への罪の意識はかなり低いといわざるをえないのが実情で、これだけの膨大な数の違法品が自国から輸出されている事態を未然に防止できない中国当局側の対応にもかなり問題があるといわざるを得ません。
しかも、発覚している分でだけでもこれほどの数なのですから、闇で流通している模倣品を加えると、どのくらいの数となるのか想像だにできません。それに、3万件以上というのはあくまでも商標違反の物品だけで、デザインの権利である「意匠」をコピーした物品は、前年比の約16倍に達しており、実に13万5,135件と、商標をはるかに上回る数となっているのです。
商標と意匠を丸ごとコピー
商標を丸ごとコピーした品よりも、デザインを模倣した品の方が発覚しにくいようにも思えますが、それでも商標違反よりも約4.5倍もの数が摘発されているのが現実です。その経済的損失額は、単に国際的刑事事犯の域を超えており、すでに日中間の貿易問題に発展せざるを得ない領域に達しているといってよいでしょう。
意匠権を侵害したコピー商品は、捜査当局の目くらましにオリジナルとは異なる商標シールをブランドの位置に貼り付け、輸入後に業者がそのシールを剥がすとブランドの商標コピーが現れるという巧妙な手口が用いられているものさえあります。
これらのコピー商品は、意匠権と商標権を同時に模倣しており、有名ブランドのイヤフォンやヘッドフォンなどのオーディオ機器などに加えて、時代の流行を反映して最近では人気スマートフォンのケースなどモバイル機器類の関連グッズにまで被害が及んでいます。
日中間には、歴史認識や尖閣諸島の領有権などの諸問題がしばしば俎上にのぼりますが、実は知財に関する日本の経済的損失がそれらに比肩し得る深刻な問題であることを、日中両国の政府は強く認識して解決の策を講じる必要があるように思われます。