「ミンナミンCドリンク」に商標権が与えられた理由
「ミンナミンCドリンク」は、大塚の「元気ハツラツ オロナミンC」で有名な「オロナミンCドリンク」によく似た商品とされています。「ミンナミンCドリンク」はタムラ活性が販売しているドリンクですが、「オロナミンCドリンク」によく似ていることから、間違えて購入する方が多いとされている商品です。 「ミンナミンCドリンク」は1991年から販売されていますが、「オロナミンCドリンク」よりも後に発売されていることから類似商品として捉えることができるものです。
「ミンナミンCドリンク」の瓶の大きさと色・赤のラベルに白抜き文字・黄色仕様表は「オロナミンCドリンク」と酷似したものです。 しかし「ミンナミンCドリンク」については商標登録が行われています。
ミンナミンCドリンクが非類似とされた理由
「ミンナミンCドリンク」は平成5年に商標登録、出願日については平成3年となっていますので、昭和41年に出願して登録となった「オロナミンCドリンク」よりもずっと後になります。いずれも商品および役務の区分、指定商品および指定役務について同じ区分で申請されていることから、特許庁においては類似商品とはしていないようです。
非類似とされた部分について
この商品はどうして非類似として認められ、商標権が与えられたのでしょうか。称呼については「ミンナミンCドリンク」ではミンナミン、「オロナミンCドリンク」ではオロナミンシーおよびオロナミンとなっていますので類似性は見られません。
キャップについても「ミンナミンCドリンク」はスクリューキャップであり、「オロナミンCドリンク」は、マキシキャップを採用していますので異なるもといえるものです。また上から見たときのキャップには、ともに赤に抜き文字を採用していますが、これらにおいても大きな類似性を感じません。ラべルの「炭酸飲料」の文字についても「ミンナミンCドリンク」の特有のもので、瓶についても若干異なる点が登録の理由となったのでしょう。
つまり、「ミンナミンCドリンク」は称呼、キャップ、ラベル等から類似性を感じられない為、非類似と認められ商標権が与えられたのです。それでも外観上はよく似た商品であることは確かです。ただし、商標をとれているか否かと侵害か否かの問題は別です。 また商標権の効力が及ばない場合には、不正競争防止法に基づいて権利を主張することも考えられます。
なお「オロナミンCドリンク」によく似た商品は「ミンナミンCドリンク」だけではありません。ここでは「ミンナミンCドリンク」について見てきましたが、キャップ、色彩、瓶の形などがよく似たもので商標登録されていないドリンク商品もあります。このように有名な商品については、類似商品が多く発売されているのです。
そもそも、登録商標とはなにか?
「商標」とは英語の「トレードマーク」=”Trademark”を直訳した単語です。”trade”とは「商業・商売・取引」の意味で”mark”は「印・標章・跡・痕跡」などを意味しており、「商標」とは「商業標章」の略称なのです。 「トレード」は「プロ野球の○○選手がトレード」「純金のトレード情報」などよく用いられており、「マーク」に関しても、すでに日本語化しているといってもよいでしょう。また「これが私のトレードマーク」という風に、むしろ「商標」という日本語よりも英語の「トレードマーク」に方が私たち日本人にとって馴染みが深い言葉とさえいえます。
企業と消費者を共に保護する
「商売として用いる標章」としてのトレードマークすなわち「商標」は、商品の認知度を上げ企業イメージを高めるために大きな効果があることと同時に、他社の商品(サービス)との明確に識別させる目的で使用されます。そして、企業にとっては自社の商標を他社のものと消費者が混同してしまうことは絶対に避けなければなりません。
これは消費者側も同様で、複数の紛らわしい商標があることで混乱をきたしてしまうという不都合があります。 かかる社会的混乱を防ぐことを第一義として法制化されたのが商標法なのです。
すなわち、商標法とは商標を所有している企業の権利を守る法律という見方がされがちですが、実は消費者を保護する制度でもあることをまず認識しておく必要があります。
登録商標の社会的意義
商標は、知的財産権の分野における工業所有権のカテゴリーに属しています。ということは、必然的に特許と同様に「出願・審査・登録制度」がとられています。つまり、ある商標を権利化するにはまず特許庁へ「出願」し、特許庁はその出願された商標が登録に値するか(登録商標として権利化できるか)について審査を行い、権利化が認められたのちは正式に特許庁へ登録され、晴れて登録商標となるわけです。
ちなみに「登録商標」の英単語”Trademark”の頭文字をとって、商品に”TM”と表記されることがあり、米国発の商品によく見受けられます。そして「登録商標」は英語で「レジスタード・トレードマーク」=“Registered trademark”であることから、丸印の中にRの1文字で表記(レジスターマーク)されることが多く、この表記は日本でもおなじみとなっています。
なお、商標法で登録済の商標にレジスターマークを表記することが義務付けられているわけではありませんが、近年は業者間のトラブル防止のために表記することが増えてきているようです。レジスターマークが一般的になってきていることで、消費者に対するアピール的な意味合いも含まれているようです。 このような商業における不都合をなくすために制定されている法律が「商標法」なのです。
企業における商標登録の重要度
急激に加速する情報化時代
業種を問わず、現代の各企業の社会的環境の変化は年毎にその速度を増してきています。極端にいえば、ほんの1年前までは常識であった企業概念がもう通用しなくなっているということも珍しいことではない時代です。まさに日進月歩という言葉がより加速化しているのが現状です。その要因はいくつか挙げられますが、急速に進むグローバル化の波と、インターネットの普及拡大が最大のファクターではないでしょうか。
特に、モバイル通信機器の発達によって消費者の情報共有化が進み、企業側も小手先の改革では対応できないほどにネット社会の伝播力の威力は眼を見張るものがあります。換言すれば、消費者がより賢くなりホンモノを求める鑑識眼が鋭くなってきている時代ととなっているともいえるでしょう。そして、一度市場に話題がのぼると、プラス面マイナス面ともに一気にその情報が拡散していくという風潮が顕著になってきています。
ネット時代に適合した視認性の高い商標
企業側も、ネット広告に加えてツイッターやフェイスブックなどのSNSを最大限に生かす広告戦略を模索し始めています。そして、ここでキーポイントとなるのが商標なのです。というのも、近年はスマートフォンやタブレットなどのいわゆるモバイル機器類が爆発的に普及を拡大し続けていることから、特に広範囲に一般消費者に自社商品・サービスを訴求したい企業にとっては、より視認性のある自社ブランドが必要不可欠になってきているからです。
この傾向は2015年以降特に顕著になってきており、自社ブランドを表すアイコンをすっきりと簡素化したロゴに変更することが世界的なトレンドとなっています。これは、モバイル機器画面の小さな画面においても、商標と企業との親和性を高め消費者への認知度を確立するためには必然的な企業戦略となっているのです。
CIから新たな商標戦略の時代に
企業の名称や商品ブランドを登録商標として保護・権利化することの重要性は、日本でも1980年代後半のバブル経済最盛期にいわゆるCI(コーポレート・アイデンティティー)が流行し、多くの企業が自社ブランドを大胆に変更し商標登録化した時代がありました。この時代までは、登録商標自体の需要度よりもCIを大きく宣伝することに重点が置かれていました。 しかしながら、2015年4月から導入された色彩・音・ホログラムなど新しい概念による商標が加わり、これがネット社会の発展とともに、商品開発と同じかあるいはそれ以上の価値を有するファクターとなりつつあるのが現代の商業市場といえるのです。