自社ブランドの信頼性を揺るがす商標侵害の判断方法
誰もが一度は聞いたことのある有名なブランド製品は、通常、商標法によって保護されています。商標法は、商標権を設定することにより、これを侵害している第三者を商標法違反として追及する法律です。このような有名なブランドは、実は、商標法のみならず、不正競争防止法によっても保護されているのです。
不正競争防止法は、その名の通り、不正な競争を防止するための法律で、典型的には、有名ブランドの信用にただ乗りして自社の商品を売買しようとするような行為を防止することを一つの目的としています。不正競争防止法では、「周知表示混同惹起行為」といわれる、有名な商品等表示という)と紛らわしい商品等表示を使用し、このような紛らわしい商標を使用した商品を譲渡することにより、本来の商標の持ち主の商品と混同させる行為や、このような商品等表示を使った商品を譲渡して他人の商品などと混同させる行為を不正競争としています。不正競争防止法における商品等表示には、商標以外にも商号・商品の容器・包装などの営業を表示するものが含まれます。
また「著名表示冒用行為」といわれる、他人の著名な商品等表示と同一や類似のものとして使用する行為や、このような商品等表示を使った商品を譲渡する行為は、そのような商品が他人の著名な商品と混同が起こりえない状況であったとしても、不正競争とされます。
有名なブランドにおいては、混同が起きてしまうとその信頼の回復が困難であることはもちろん、混同が起きなかったとしても、他人が似たような商品等表示を使用するとブランドイメージが崩落してしまう危険性が高いため、この不正競争防止法によって差止めや損害賠償の請求をすることができるとしています。
不正競争防止法が適応された事例
前述したように、不正競争防止法には、「周知表示混同惹起行為」が代表的な不正競争として規定されています。この周知表示混同惹起行為であるとして不正競争防止法が適用された事件として「iMac事件」があります。この事件では、アップルコンピュータ社のコンピュータ「iMac」の形態(形状や色)が周知な商品等表示であり、この形態に類似した形態のコンピュータについて、需要者がアップルコンピュータ社の「iMac」と誤認混同することがあったと認定され、アップルコンピュータ社の相手方への差止請求を認めました。
自社ブランドの信頼性を守る法律
また、「著名表示冒用行為」に該当するとして不正競争法が適用された事件として、「スナックシャネル事件」があります。これは、実際には、シャネルはアパレルブランドであるため、飲食店であるスナックに「スナックシャネル」と表示しても需要者が実際に混同を起こすことはないものの、他人(シャネル)と何らかの営業上の関係やグループ関係が存すると誤認させる可能性があり、このような状況から著名商標を保護する必要があるということになります。
あるブランドが著名となって高い信用を備えた場合、「混同」は生じないとしてもフリーライド(信用・顧客吸引力へのただ乗り)やダイリューションと呼ばれる商品等表示の出所表示機能の希釈化、ポリューションという商品等表示のイメージの汚染を防止する必要性があることから、不正競争防止法が適用されるのです。このように、不正競争防止法は、商標権ではカバーしきれない様々な商品等表示を保護する重要な役割を担っています。