今度は大丈夫?東京五輪の公式マスコット決定
2020年に約半世紀ぶりに東京で開催されるオリンピック・パラリンピック。2018年2月にはマスコット・キャラクターが決定しました。今後はこの可愛いキャラが日本中で愛嬌を振りまき、オリンピック・ムードを盛り上げてくれることでしょう。
ただし、今回の東京五輪ではメインスタジアムやエンブレムの決定にいたるプロセスでさまざまな問題が起きています。商標権もからんだ騒動から今回のマスコット決定までのプロセスを追ってみましょう。
小学生が選んだマスコット・キャラクター
「2020年東京オリンピック/パラリンピック」では、マスコット・キャラクターの決定に、これまでの慣例とは異なる方法がとられました。まず公募されたイラストの中から大会組織委員会が選出した3つの作品を最終候補作品として発表し、これを全国1万6,769校の小学生の投票にて決定するというものです。
このような選出方法がとられたのは、2015年に日本中が大騒動となった「五輪エンブレム(ロゴマーク)問題」が強く影響しています。最初に発表されたエンブレムが「盗作疑惑」にさらされ撤回されたことで、その選考過程の透明性についても批判が集中していたのです。
そこでマスコットキャラの選定では、大会組織委員会は最終候補作品の中から、小学校の生徒たちに投票してもらうことで批判の回避策をとったというわけです。五輪エンブレムやマスコットキャラは、大会のサポート企業に限定して商業使用できることになっており、スポンサー契約の費用によって大会が運営される仕組みになっています。
したがって、のちの商標トラブル対策として五輪エンブレムの選考過程は関係者のみの極秘事項となっており、候補作品は世界中の登録者商標に類似したものがないかどうかを入念に調査されたとのことです。運営側は「類似なし」と判断していましたが、発表後にベルギーのデザイナーから自作の摸倣であるとの抗議が寄せられたり、作者の他の作品に対する「盗作疑惑」などもあいまってネット上では非難の嵐となったのです。
エンブレム選出での騒動を回避
結局エンブレムは当初の発表作品が撤回され、改めて選考過程をオープンにした上で現在の「組市松紋」のデザインに決定しました。そして、マスコットキャラに関しては、エンブレム騒動の轍を踏まないようにと、最終選考で一般の小学生による投票という形式がとられたというのが今回のおおまかな経緯です。
決定したマスコットキャラはエンブレムの市松模様を取り入れた可愛い男女のロボットのイラストで、10万9,041票を獲得しトップとなりました。もちろん商標に関する事前調査も完了しており、発表前には商標出願も済ませていたものと推察されます。
マスコットの絵柄はエンブレムのように単純な図案ではなく、オリジナルのマンガ的なキャラクターなので、摸倣問題が再燃する心配はまずないと思われます。エンブレムでは大騒動の発端となったネットユーザーの反応も概ね好評のようで、関係者は胸をなでおろしていることでしょう。
ネットによる「炎上騒ぎ」を教訓に
もっとも、最初のエンブレムの際も、大会の責任者は「類似商標ではなく問題なし」と強気のコメントを発表していました。実際に裁判沙汰に発展したとしても、これが盗作とされるかは否定的な意見が大半を占めていたのです。
批判はむしろデザインの類似性にあるのではなく、不透明な選考過程の方にあり、作者が有名美術大学の教授であったために「出来レースではないか」との疑惑が取沙汰され、作者の過去の作品まで入念に検証されてネットが「炎上」したことが、騒ぎは大きくなった要因ともいわれています。
オリンピック/パラリンピックでのエンブレムやマスコット・キャラクターは日本国民の共有財産であるべきとの思いが強かったことがプラスにもマイナスにも作用するという教訓になりました。それと、半世紀前にはなかったネットとSNSが世論形成に大きな役割を果たしていることをまざまざと見せつけられた出来事だったともいえるでしょう。