商標権侵害が原因と噂の「チケットキャンプ」閉鎖問題
有名タレントのコンサートやイベントのチケットを転売する仲介業で知られていた「チケットキャンプ」が、2017年の年末に突然インターネットのサイトを閉鎖すると公表し、ユーザーや業界関係者の間に衝撃が走りました。
確かに「チケット転売」という事業形態に一種の危うさを感じる向きも多く、「何かの不祥事か犯罪がらみでは?」という憶測も流れました。ところが、閉鎖の実態は人気グループの商標問題にあったというのが真相のようです。
「チケット転売ブーム」で仲介業者登場
コンサートのチケット販売については、2000年代に入って「転売」がブームとなり、インターネットの普及によって、当初はファン同士がネット掲示板やブログ、オークションサイトなどでやり取りしていたものが、2010年代に入ると、チケット転売の仲介をビジネスとする業者が現れました。
個人同士のやり取りでは詐欺などの被害に遭うケースもよくあり、業者を通すことで不安なく購入できる安心感がユーザー側にあり、業者には手数料で稼ぐという両者に「うま味」があるビジネスとして定着していたわけです。
チケット転売仲介業としては「チケキャン」の呼び名で知られていた「チケットキャンプ」は、2015年に大手IT企業のミクシィが115億円という巨額の費用で買収され、当時大きな話題となりました。多くのユーザーを抱えるSNSを運営するミクシィがチケット転売を手がけることで、それまでどことなくグレーの印象が強かった業種が陽の当たる存在になる可能性も囁かれたのです。
大手芸能事務所がチケキャンを告発
ミクシィの傘下となった「チケキャン」は、300万人のユーザーが利用する人気サイトに成長し、チケット転売についても、これを許容する世論も形成されつつあった矢先、突然のサイト閉鎖発表の舞台裏には、どうやら大手芸能事務所「J」との商標権をめぐるトラブルが要因だったと指摘されています。
多くの人気グループをかかえる「J事務所」には「転売のおかげで良い席がとれない」「通常の何倍も出さないとコンサートに行けない」という若いファンの苦情が多く寄せられていたようです。J事務所にとっては、転売防止のため、購入時と入場時の本人確認を厳しくするなどの対策を講じてはいましたが、抜け道を使う手口によってイタチごっことなっていました。
チケットキャンプのサイトには「J通信」というページがあり、ここに掲載されていたグループのロゴが商標法と不正競争防止違反であるとJ事務所側が告発し、兵庫県警がチケキャンを運営する「フンザ」を商標法違反の容疑で強制捜査に踏切り、同社の親会社であるミクシィがチケキャンのサイト閉鎖と関係役員の処分を発表したというのがおおまかな流れです。
業界では、今後チケキャンが再開される見通しはほぼないと思われており、ミクシィはこれを契機に手ケット転売の仲介業務から撤退すると見られています。
行き過ぎたチケット転売に歯止めがかかる?
現象面だけを見れば、ある企業が商標法違反の嫌疑をかけられただけで、なぜ事業自体を停止してしまうのか不審に思う人も多いことでしょう。
今回の事件の裏側では、各企業間と警察当局との思惑が複雑にからんでいるようにも思えます。チケットの高額転売では、さまざまな問題が浮上しており、いずれ法の網がかけられるのでないかという見方が強まっていました。
チケキャン側としてもいくら事業を正常化しようと努力しても、欲にかられた一般人が違法行為に走ることを完全に防ぐ手立てはなく、このままでは親会社にも悪いイメージが及んでしまうとの危惧があったとも思われます。
J事務所側として商標法違反を突破口に、行き過ぎたチケット転売に歯止めをかけたいという思惑があったと推察されますが、まさか一気にサイト閉鎖から事業停止になるとは予想外だったことでしょう。いずれにせよ、商標トラブルが大きな事業を停止させたとして記憶に残る事案となったことに間違いはありません。