「テプラ」の商標に酷似―キングジムがテレコム他を提訴
テープライターは手軽に文字や図形の入った粘着式のラベルテープが簡単に作成できる便利な用具として重宝されており、今や事務用品として欠かせないアイテムとなっています。
テープライターでは大ヒット商品「テプラ」で知られる大手事務用品メーカーのキングジムが、商標法違反としてOA用品メーカーのテレコムを提訴したというニュースが報道されました。この係争の背景を探ってみましょう。
市場を独占する大ヒット標品「テプラ」
キングジムが製造販売している「テプラ」は「テープライター」を略した商品名で同社の登録商標です。テプラはキングジムが独自に開発した製品で、テープ式ラベルライターでは同社が市場をほぼ独占しており、企業などでは「テプラする」という言葉がごく普通に使われているほど普及しています。
キングジムは創業90年を超える老舗の事務用品メーカーで、1988年に発売された「テプラ」は日本のみならず海外でも大ヒット商品となり、2017年現在で類型900万台に達する同社の看板商品に成長しています。テプラのヒット以後、数社が追随していくつかの製品を販売しましたが、テプラの牙城は崩せず、いずれも撤退を余儀なくされ、近年のラベルライター市場はテプラの独占状態となっています。
テプラとの互換性をアピールした類似品
ところが、2018年1月にキングジムがテプラに関する商標法違反で訴訟を起こしたというニュースが飛び込んできました。提訴されたのはOA周辺機器メーカーであるエレコムとOAサプライ品メーカーのカラークリエーションです。
キングジムによると、カラークリエーションが製造しエレコムが販売しているラベルライター用カートリッジが「テプラPROシリーズの互換性を謳って販売されており、その商品に記載された『TEPRA PRO 互換』の文字フォントと配色がキングジムの商品と酷似しており、キングジムが所有するテプラの商標権を侵害している」というものです。
エレコムはさまざまなOA関連の消耗品の販売を手がけており、カラークリエーションは主にPCプリンターのインクカートリッジを製造販売しています。そこでエレコムとカラークリエーションが手を組んで、安価なテプラ用の交換カートリッジテープを市場に送り出したということでしょう。
注目される今後の裁判の成り行き
PCプリンターでは機器本体よりも、むしろ頻繁に交換が必要なインクカートリッジがメーカーの稼ぎ頭となっており、それに便乗する形でエレコムやカラークリエーションをはじめとする数社が安価なカートリッジを販売しています。
今回提訴された2社はプリンターカートリッジの販売戦略をテープライターで再現しようと目論んだのでしょうが、テープライター市場がテプラに独占されていることから、見慣れたテプラのロゴを見て購入するユーザーが多いと考え、あえてテプラのロゴに似せて販売する方法を選んだのかもしれません。確かに、両者のロゴは大変よく似ており、ユーザーが正規品と見誤って購入する可能は高いように思われます。
キングジム側には両社から事前に打診はなかったとのことなので、裁判で「ロゴの類似性」が認定されればキングジム側が勝訴すると思われます。このような類似商標の裁判では、オリジナル商標の権利を侵害しているかどうかと同時に、その商品を消費者が誤って購入する可能性が審議されます。消費者を誤誘導させる行為は、たとえそれに悪意がなくとも反社会的行為とみなされるのです。
エレコム側が敗訴となれば、単に商品の販売停止となるだけでなく、次には莫大な金額の損害賠償を求める民事訴訟が待っています。このような企業同士の係争では、判決の前に裁判所から和解案が提示され、話し合いで解決することが多いようです。ラベルライター市場を独占する企業が起こした裁判の、今後の成り行きが注目されます。