国内での商標権の価値と重要性について
商標は、事業を行う上で、自分の商品・役務(「サービス」のこと)と他人の商品・役務とを区別するためのものです。そして、商標権は、出願が登録要件を満たしたときに特許庁が付与する独占的権利です。
独占的権利ですので、原則として権利者しかその登録商標を使用することができません。そのため、安全かつ継続的に事業を行っていくためには商標を登録しておくことが非常に重要になります。
国内での商標権の価値と重要性について、見ていきましょう。
1. 商標の種類と価値について
(1) ハウスマーク
ハウスマークとは、企業の顔とも言える商標であり長期にわたって使用される商標です。「SONY」や「TOYOTA」などが該当します。
ハウスマークは、あらゆる商品・サービス及びそれらの広告宣伝などに使用されているため、通常、ハウスマークには多大な信用が蓄積されており非常に価値のある商標ですから、企業としても絶対に守らなければならない重要な商標です。ハウスマークは外国出願されることも多いです。
(2) ファミリーネーム・ペットネーム
ファミリーネームやペットネームは、ハウスマークとは別に、各商品・サービスを区別するために付けられる商標です。例えば、自動車の名前などが該当します。ハウスマークと比べると、使用期間が短期であることが多いでしょう。
しかしながら、広告宣伝などにより、ハウスマークよりも有名になり商標権としての価値が高いものも存在します。例えば、「リラックマ」というキャラクターの商標は最近非常に有名になりましたが、権利者のハウスマークである「San-X」は知らない人が多いでしょう。
2. 商標権の重要性について
商標権は、「価値ある商標を保護することによって取引の安全性を確保し商標権者の利益だけでなく需要者の利益も守ること」を主な目的として与えられます。商標権者の利益をだけでなく取引の安全性も考慮されていることから、商標権の重要性が理解できると思います。
商標権の取得に費用をかけることを躊躇する人もいますが、事業を行っていく上で不可欠な非常に重要なものであることを認識する必要があります。使用している商標に関する商標権を所有していない場合、独占的に使用することができなくなるだけでなく、同一又は類似の商標に関する商標権を第三者に取得されてしまうと、差止請求や損害賠償請求を行われる可能性もあるのです。
また、その第三者が類似する商標を付けて品質の悪い商品を販売した場合、需要者が間違って購入してしまい自社の信用が大きく失われることにもなりかねません。
3. 価値ある商標権の活用について
使用によって商標が有名になって商標の価値が高くなると、いろいろな商標権の活用方法が生まれてきます。そして、その商標の使用を希望する者も増えてきます。代表的な活用例として以下のようなものが挙げられます。
(1) 権利行使
商標権は独占的な権利ですので、商標権者は、権利行使を行うことが可能です。権利行使は、商標権者自ら独占的に使用する権利行使と、他人が自分の登録商標を無断で使用している場合にその差止や損害賠償を請求する権利行使に分けられます。
価値ある商標権であれば、訴訟の際に勝訴の可能性が高くなったり損害賠償額が高額になることもあります。
(2) ライセンス許諾
商標権の価値が高くなると、第三者に使用を許諾し、ライセンス料を受け取るという活用方法もあります。例えば、フランチャイズは、商標権者であるフランチャイザーがフランチャイジーに商標等を使用させてライセンス収入を得るものです。こうなると事業規模が大きくなりますので、商標権の価値がますます高くなるのが一般的です。
(3) 商標権譲渡
商標権が高価値になる一方、自分では商標を使用しなくなった場合、他人に高額の対価で商標権を譲渡することも考えられます。
4. まとめ
いかがでしょうか。商標法には、「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ることを目的とする」と書かれています。そのため、商標は登録要件を満たせば登録されはしますが、使用しなければ保護すべき信用が発生せず、商標としての実質的な価値はありません。
商標を使用することによって、その商標に信用が蓄積し、需要者が商品を選択するときの目印になり、権利者としては商品の売上に貢献してくれる価値あるものとなります。
商標権を価値あるものにするため及び安全に事業を行うためには、まずは商標を登録し、自分自身で独占的に使用していくことが非常に重要なのです。