どこがどう異なる?商標と特許の違いについて
商標と特許の相似点
「商標登録と特許登録の違いは?」と問われて正確な回答ができる一般人は意外に少ないようです。おそらく大半の人々が「特許は発明で商標は商品に付けられた名称とかマークなのでは?」と答えることでしょう。この回答は概ね正解なのですが、さらに正確に表現すると以下のようになります。
- 商標登録とは、特許庁に登録する商品や役務(サービス)を識別するためのブランド(ロゴ・記号・図形・立体物・音・色彩・動き・ホログラム)
- 特許登録とは、特許庁に登録する、産業上利用できる分野での発明(製品や製造方法)
ちなみに、特許庁に登録が完了すればどちらも「登録商標=R」「登録済特許=PAT.」と表記できることになります。すなわち、両者とも特許庁に登録されることによって権利が発生するという点は同じで、商標登録は商品(サービス)を識別するための標章に関する権利であり、特許登録は産業上利用できる高度な発明品またはそれを製造する方法に付与される権利ということになります。
「産業上利用できる分野」とは、不特定多数の一般人が利用する製品や商品の分野という意味であり、どちらも「工業所有権」のカテゴリーに含まれます。なお、同一の品を大量生産できない特殊な技術や技法は対象外であり、文学・音楽・絵画・写真・映像などの芸術分野については「著作権」の保護対象となります。
商標と特許の相違点
商標登録と特許登録は、単に産業上のカテゴリーの区分だけでなく、もっと本質的な相違点があります。その最たるものに、権利の存続期間が挙げられます。
両者はともにそれが権利化にふさわしいものであるか否かについて、特許庁に出願し適正な審査を受ける規定があります。ここまでは同じなのですが、実際に登録した以後の権利期間は、特許が出願から20年で、商標に関しては登録から10年となっています。
すなわち、特許に関しては出願から20年経過すると特許権は消失し、その発明については誰もが自由に使用することが可能となります。
これに対し、商標は登録から10年で期限切れとなりますが、特許とは異なり出願人が期間の延長を申請できるようになっています。つまり、10年毎に更新し続ける限り、半永久的に権利が存続するというわけです。このことから、登録商標は「永久権」と表現されています。
そこで「商標は登録の更新ができて権利をずっと存続できるのに、なぜ特許の更新は認められていないのか」という疑問が生じます。
これは特許と商標との特性の差異に起因しています。両者ともに産業界の発展のために制定された法制度であり、特許の場合は産業上利用できる分野での高度な発明に対し、出願人に独占使用権を付与することで、産業人の創造意欲が刺激されさらに便利な発明が誕生し、結果として「便利で発展した社会」の実現されます。
しかしながら、いかに高度な発明でも年数の経過しそれが社会に普及してしまうことにより、いつまでも一個人や企業に権利を独占させておくことの弊害が出てきます。このことから、特許は出願から20年という期限が設けられているわけです。
「惜別ブランド」たる「商標登録」の特性
特許とは異なり商標は発明ではなく、あくまでも商品(サービス)の識別ブランドなので、これが一定期間を過ぎて誰もが使えるとなると、特に有名なブランドに関しては甚大な社会的混乱が生じかねません。
ブランドは特定の商品に対する商品の価値や信頼性を意味しているので、これが粗悪品に付けられたりすると、企業だけでなく一般消費者の不利益にも繋がります。そこで、商品に関しては10年毎の登録更新が認められている、というわけなのです。
以上、「特許は発明」「商標はブランド」の独占権であり、共に特許庁が許諾し登録された「工業所有権」であるものの、「特許には権利期間があるが、商標には更新制度があり永久に権利が存続する」という点が両者の特性を表す最も大きな相違点といえるのです。