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系列会社での商標の共有が可能に

商標審査基準の改訂が進む

2017年1月、特許庁は産業構造審議会での議論を踏まえた商標審査基準改訂案を公表しました。商標審査基準は、商標法の解釈や審査のポイントをまとめたものであり、特許庁の審査官のバイブルとも言えるものです。商標審査基準は対外公表されていますので、企業側にとっても出願する商標の登録可能性をあらかじめ判断することができます。

 

近年、商品やサービス、広報手法の多様化もあって商標審査基準の見直しが続いています。特に、今回の改訂案は商標法上の「自己」と「他人」に関する新しい解釈が盛り込まれたことによって大きな注目を集めています。

 

商標法では、「自己」の商品や役務で使用をする商標について商標登録をすることができると規定するとともに、「他人」の周知商標については登録することができないとしています。これまでは「自己」と「他人」の範囲が厳格に解釈されすぎていたために企業活動にある種の制限が生じていました。

商標法上の「自己」と「他人」

たとえば、知財株式会社が「特許サービス」という商標を出願し、登録されたとします。そして、この商標をつけたサービスが好調に推移したことを受け、エリア別に重点実施していくために東日本知財株式会社、西日本知財株式会社を別に作るとします。このような系列会社で同一商標、パターン化された商標を使用していこうというときに、商標法の「自己」と「他人」の壁がありました。

 

系列会社といえども、法人格としては別の存在です。これまでの商標審査基準ではこの点を厳格に解釈していたため、東日本知財株式会社で「特許サービス東日本」という商標の登録を受けることが難しかったのです。なぜならば、親会社で登録済の商標の存在があるがゆえに「他人」の商標と類似していると判断されるからです。親会社、系列会社の関係であったとしても法人格は別、他人であるという考え方です。

 

このため、これまでは系列会社で商標を共同利用する際には、親会社で系列会社が使用する商標の出願をして、登録後に系列会社に譲渡したり、ライセンス契約を結んだりと手続きが煩雑になっていたのです。

新基準では系列会社の商標出願がスムーズに

公表された新基準案では、出願人と引用商標権者に支配関係があり、引用商標権者の了承があれば、類似した商標であっても登録を拒絶しないとの解釈が示されました。

 

これを先ほどの例にあてはめると、東日本知財株式会社が「特許サービス東日本」の商標登録を受けようとするときは、元となった「特許サービス」の商標権を保有する親会社の了承をとれば良いということです。

 

新基準案では支配関係の解釈として、議決権の過半数を有する場合、資本提携していて事実上の支配関係にある場合と具体的に例示しています。この例示を素直に受け止めると、一般的な系列会社のほとんどが当てはまりそうです。今後は、親会社を経由せずとも系列会社独自で商標出願・登録ができることになります。

ブランド戦略の幅が広がる

親会社で一括して商標を管理し続けるというのも、もちろんひとつの選択肢ですが、系列会社に独自の商品企画まで任せているなどは今回の改訂案によってブランド戦略の幅が広がりそうです。

 

たとえば、コンテンツを主軸としたビジネス展開をしていると、映像作品、関連書籍、キャラクターグッズと多方面の商品やサービスを扱っていくことになります。このような場合、一次創作物である映像作品の商標は親会社、派生した書籍やグッズの商標を系列会社で管理すると役割分担することで、「(映像作品の商標)の○○」といった商品展開を機動的に進めることができますし、関連商品の商標権の出願・登録漏れといったことも防げそうです。

 

今回の審査基準改訂のように、商標に関する制度は常に時代に合わせて変わっていきますので、最新の情報を持つ専門家と相談しながら、自社グループに合った商標管理態勢を再編成してみてはいかがでしょうか。

 

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