「マンガ・アニメ・ラノベ・ゲーム」―サブカルチャーと商標
日本では、かつては白眼視されていた時代がまるで嘘のように、マンガ・アニメ・ラノベ・ゲーム」などのいわゆる「サブカルチャー(サブカル)」と呼ばれる分野が、今ではすっかり市民権を得ています。
これら「サブカル作品」の多くは、ビジュアル面で多くのファン層を獲得し、今や社会にあふれる時代となっています。そして、これらサブカル作品の商標権を取得する企業も多くなりました。
今回は、サブカルチャーと登録商標にまつわる話題を紹介しましょう。
「マンガ」から「ゆるキャラ」まで
「サブカルチャー」とはすでになじみ深い外来語となっていますが、あえて日本語に訳せば「副次文化」となります。すなわち長い歴史を有する古典的な「美術・演劇・音楽」のカテゴリーに含まれなく新興文化であり、かつては古典的文化・芸術に対して「大衆文化・芸能」という言葉がありましたが、それよりもさらに新しい1980年代以降に誕生した若者文化を指す言葉ともなっています。
新しい文化だけに軽くみられる傾向が強く、以前は「すぐに廃れる一時的なもの」とみなされることも多かったサブカルチャーですが、日本で生まれたサブカルチャーの代表格である「マンガ・アニメ・ラノベ・ゲーム」などの若者文化は、インターネットの普及によって2000年代から日本の流行が急速に海外に伝播し、その人気が日本に逆輸入されることで、今や世界の産業界に大きな影響をおよぼすまでに成長してきています。
最近では、「ふなっしー」や「くまモン」など各地方自治体までが「地元のゆるキャラ」を作って大きな経済効果を挙げているほどです。
複数の商品区分を押さえて膨大な売上に
当初はコアなファン層に限られていたサブカルチャーの分野も、大きな産業に成長するにつれて作品のタイトルキャラクターなどを「登録商標」にすることで、大きな知的財産権ビジネスに発展しています。
雑誌の連載マンガやライトノベルがヒットすれば、その作品はアニメ化されゲームになり並行してキャラクターグッズなどの商品が販売されます。ヒット作品となると数十億、数百億単位の売上を挙げるものもあり、商標権者の元には莫大な権利収入が入ることとなります。
商標出願の際には、商品区分の指定が必要ですが、女の子に人気のアニメ「プリキュア」を例にとって見てみると、がん具はもちろん化粧品・貴金属・楽器・家具・加工食品にいたるまで、なんと23もの種類が出願されていて驚かされます。これらの商品全てにキャラクターの絵柄が付いて販売されるのですから、売上が膨大な金額となるのもうなずけます。
サブカル商標出願の皮肉な現象
人気マンガのキャラクターを、おもちゃや菓子などの販売促進に利用するという企業戦略は戦前からあり、戦後にはマンガ雑誌が大流行しテレビアニメがスタートした1960年代頃は、あくまでも商品の宣伝材料だったのが、サブカルが定着した現代は作品自体が一大マーケットとなって、多くの分野の商品を飲み込んでいるかのようにも感じられます。
これほどまでに影響力を持つに至ったサブカルだけに、ヒット作品をめぐっては、内外から多くの商標権侵害事件が多発しています。これら類似商標や剽窃商標を防ぐために、アニメなどでは新作のスタート前の段階で、主要な商品区分を押さえて新キャラクターなどを商標出願しておくという対策も最近は高じられてきているようです。
前述の「プリキュア・シリーズ」でもこの手法がとられたのですが、商標の出願情報は出願から1ヵ月ほどで公示されるため、正式な発表前の段階で新リリーズのタイトルや主要キャラが判明してしまうという事態を招いています。
同様のことは「ポケモン」や新キャラや「仮面ライダー」の新シリーズでも起きており、熱心なファンは「商標公開公報」を詳細に閲覧して内容をネットで拡散しているようです。制作側にとっては困った問題ですが、ネット社会が生んだサブカル・ムーブメントの皮肉な現代的現象といえるかもしれません。