色彩だけの登録商標
初の色彩商標となった2件
2015年4月から出願受付が開始された「色彩商標」は、従来の登録商標に関する一般的概念を根底から覆すほどの革新的な内容でした。
それまで「記号・文字・図形・立体形状およびこれらの組合せ」に限定されていた商標カテゴリーに「色彩・音・動き・位置・ホログラム」などが加わったことで、企業の広告宣伝戦略に多大な影響を及ぼすこととなりました。
そして、音や動きの商標査定に続いて初めて公表される「色彩商標」について、一体どの企業のいかなる商標に与えられるのかが、産業界の注目の的となっていたのです。
そして、2017年3月1日に特許庁が発表した色彩商標は、コンビニエンスストアの最大手「セブンイレブン・ジャパン」と大手文具メーカーの「トンボ鉛筆」の2社のものでした。
セブンイレブンは各店舗の看板や外装デザインやオリジナル商品などに用いられている「白地にオレンジ・緑・赤」各色の組合せで、トンボ鉛筆は主に同社の消しゴムケースにレイアウトされている「青・白・黒」の組合せでした。
これらの色彩デザインを見れば、消費者の誰もが「ああ、あれか」とすぐに分かるほどに有名な商標の色彩構成です。
産業界が注目する「色彩だけの商標」
「色」とは、光の波長の中で人間が識別できるごくわずかの範囲内の反射光であり、一般的には空にかかる虹の七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)で表されます。
そして企業の商品に使用される「色」は、各色で微妙な色合い違いはあるものの、この七色がベースとなっている以上、色の組合せには限りがあり、同じような色彩構成の商標が存在するのはむしろ必然的とさえいえます。
このことから、単に色の組合せしただけのものを登録商標として認めると著しい不利益が生じることとなるので、記号・文字・図形と色彩を組合せたものに限るというのが登録商標の常識でした。
それが法改正によって「色彩だけの商標」が認められることとなり、世間から大きな注目を浴びたというのがこれまでの経緯です。
「果たしてどのようなものが色彩商標として認められるのか」というのが業界の最大関心事であり、色彩構成だけで商標登録ができるという現実は企業にとって大きな魅力でもあります。
「音・動き・位置・ホログラム」など他の新商標と比較しても、出願件数が最も多かったことが産業界での関心の高さを物語っています。
出願約500件中、査定はわずか2件のみ
しかしながら、これら新商標の出願件数の約4割を占める500件近くの出願があったにも関わらず、実際に商標査定を受けたのは、前述の2件だけという結果でした。
しかもこの2件は、すでに30年以上も続いているヒットブランドであり、商品名のロゴがなくてもその色の配置だけで、誰もがその商品(サービス)を認知できるというものです。
このことは、色彩商標が産業界に与える影響の大きさを示しており、特許庁がより厳しい基準で審査したと想定させます。すなわち、記号・文字・図形とは異なり、色彩商標に限っては、長期間の使用実績と一般消費者からの幅広い認知度がなければ商標査定とはならないということが読み取れます。
セブンイレブンにしてもトンボ鉛筆にしても、その色彩構成だけ真似て商品名のロゴだけを変えて販売(営業)するという模造品(店)が過去に数多く出回っており、それは日本国内だけでなくアジア各国ににまで及んでいます。
これらの全てを「不正競争防止法」のみで対応するには限界があり、今後この2社に続いて有名商標が次々に自社ブランドの「色彩商標」を出願し権利化していくものと思われます。
また、各企業においても、自社のCI戦略や新商品開発時において「色彩レイアウトをどうするか」という課題を、商標登録にからめて考える必要性に迫られてくるといえるでしょう。