商標法が規定する「類似群コード」と「区分」について
登録商標は、10年毎の更新手続さえ継続すればその権利は永続的に保有することができます。出願から20年後には権利が喪失する特許権とは異なり、商標権が「永久権」といわれるゆえんがここにあります。商品・役務の呼称やマークなどを一企業・団体・個人に独占させそれを永久に継続させるのですから、仮にそれが大ヒット商品の商標だとするならば、その権利の恩恵は莫大なものといってもよいでしょう。
登録商標がそれほどに大きな権利であるだけに、特許庁では商標の権利化の際に、まず出願の時点でいくつかの規制を設けており、その一つに「商標区分」があります。「商標区分」とは、業者が出願する商標にかかわる業種を指定するための分類区分のことで、全部で45類あり、第1類から第35類までが商品区分で第36類から第45類までが役務(サービス)の区分となります。
たとえば、チョコレートの商標を出願するには第30類「加工した祝物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料」のリストにある「菓子」を指定商品として出願します。飲食店の商標ならば第43類「飲食物の提供及び宿泊施設の提供」ということになります。
すなわち、登録商標は出願時に指定した業種においてのみ権利が発生するものであり、菓子の商標として登録された商標の権利を飲食店のサービスの商標として権利を主張することはできないということになります。もし複数の業種で商標を取得したいのならば、区分出願費用に区分数をかけた金額となり、査定後の登録費用も区分数の分だけ余分にかかることとなります。
合理的な審査方法の導入
登録商標が「永久権」であるだけに、自社の商品・役務の商標が権利・独占化できるか否かは各企業・団体にとって死活問題となる場合さえあります。そのような企業・団体であれ、一般消費者に対して訴求力の強い商標を登録するためにしのぎを削っているのが実情です。
いきおい、毎年の商標出願件数は増加傾向にあり、近年は「音・色彩・動き」などの新しいカテゴリーが認められたこともあって、今後も商標出願は増え続けることでしょう。このような状況下で、年々増加していく商標出願を審査する側の特許庁においても、より合理的な審査方式が必要となってきています。
商標独自の制度である「類似群コード」
商標法では、すでに登録済の商標と同一または類似すると判断された出願については商標登録を受けることができないと規定されています。そして、特許庁の審査官は出願された商標が登録済の商標と類似しているか否かについて「類似商品・役務審査基準」に則って査定しています。
この基準は生産・販売・原材料・品質などの部門における共有性を持った商品・役務についてそれぞれをグループ化して同じグループに属する商標は類似商標とみなされ、各グループには数字とアルファベットを組合せた5桁のナンバーが付与されておりこれを「類似群コード」と呼称されています。特許庁の審査官は、まず出願された商標の「区分」と「類似群コード」をチェックし、同一のコードで先願登録済の商標があれば拒絶査定とし、それがなく他に拒絶する理由がなければ商標登録として査定される可能性が高くなるというわけです。
このように、「区分」と「類似群コード」は特許にはない商標独自の制度であって、連日数多く出願されてくる商標に対して、膨大な数の商標出願を、特許庁の審査官がよりスピーディーにまたよりスムーズに処理するために導入されたのが「類似群コード」であり、審査の際、同一の類似群コードの商標は互いに類似商標と判断されることとなるわけです。すなわち、商標出願においての大分類が「区分」であり、区分内の各商品・役務に付与される小分類のナンバーが「類似群コード」ともいえるでしょう。