「ペンパイナッポーアッポーペン」を無関係の企業が商標出願
「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標権は誰のもの?
昨年に爆発的なヒットを記録したピコ太郎の「Pen-Pineapple-Apple-Pen(PPAP)」ですが、この商標権についてピコ太郎とは無関係の会社が出願していることが話題になっています。
事実関係を整理すると、ピコ太郎がPPAPを動画投稿サイトで公開したのは2016年8月のことです。公開後、世界的な人気歌手のジャスティン・ビーバーが好意的な評価したことをきっかけに大手メディアへの露出も増え、一躍2016年を代表するヒット曲にまでなりました。この世間の動きも踏まえ、ピコ太郎が所属するエイベックスグループでは同年10月14日に「PPAP」の商標出願をしました。
一見するとエイベックスグループの商標対応は問題ないかのように思えますが、この間隙をついてきたのが大阪のベストライセンス社です。エイベックスグループよりも早い10月5日に「PPAP」の商標を出願、11月には「ペンパイナッポーアッポーペン」を出願しています。
日本の商標制度は先願主義、つまり先に商標権を主張した者に有利な取扱いがされますので、ピコ太郎とエイベックスグループにとっては青天の霹靂とも言える事態です。今後、特許庁の審査を経て商標権の帰属先が決定していきますが、どのような結果になるにせよ通常の手続きよりも時間がかかってしまいそうです。
ピコ太郎は「ペンパイナッポーアッポーペン」を使えなくなる?
仮にベストライセンス社による商標出願が認められたとしても、ピコ太郎が「ペンパイナッポーアッポーペン」を使用できなくなるといった事態にまでは発展しないと思われます。なぜならば、日本の商標制度は先願主義をとっていますが、それと同時に先使用権も認めているからです。
先使用権とは、他者の登録商標であったとしても、その出願より前に同一の商標を使用し、かつそれが周知のものとなっている場合は、引き続きその使用を認める権利です。ピコ太郎がベストライセンス社の出願より前に「ペンパイナッポーアッポーペン」を使っていることは確かですし、それが周知のものであることも社会現象にまでなったことを踏まえればあきらかでしょう。
また、そもそもベストライセンス社の出願が認められる可能性は極めて低いものと考えられます。他人の著名な商標の先取りに当たるような出願は商標登録の拒絶要件に該当しますし、批判的な報道が続く中であえて「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標権を得るメリットも思いつきません。
流行語の権利は常に他社から狙われている
「ペンパイナッポーアッポーペン」に限らず、流行語の権利は常に他社から狙われていると考えておいた方が良いでしょう。商標の先願主義を半ば悪用して先取り出願した商標の使用権を売買するブローカーのような存在がいるのです。
このような商標ブローカーに先取り出願されないようにするためにも、新しい目玉商品・看板商品のネーミングを考案した際は、迅速な商標出願が求められます。
販売が本格化してから、人気が定着してからと出願を先延ばしにするほど商標ブローカーによる先取り出願のリスクは高まっていきます。
また、特許庁側でも他人の著名商標の先取り出願を大量に行う者がいることを問題視しており、このような出願については却下処分を行っていくことをウェブ上で断言しています。加えて、先取り出願されたことのみをもって自身の商標出願・登録を断念しないでほしいとも訴えています。
商標権の買い取り要求、出願取り下げにあたっての金銭要求など、商標ブローカーの手口は様々ですが、無条件に要求を受けいれることはせず毅然な対応をとっていくことが大事です。商標ブローカーに目をつけられた場合は、専門家である弁理士とも相談しながら対処方針を決定していきましょう。