マドプロ(マドリッド・プロトコル)とは
中小企業にも優しい国際登録出願(マドプロ)
商標の保護に関する法制度、出願手続きは各国によって異なり、専門部署を持たない中小企業にとって外国で商標出願・登録するには、高いハードルがありました。これは日本市場への進出を目指す外国企業にとっても同様であり、各国の商標担当官庁の共通課題でもありました。
このような事態を打破していくために、各国で協議して制度構築されたのが、マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録制度、いわやるマドプロと呼ばれるものです。マドプロでは、外国での商標出願であっても日本の特許庁を通じて手続きを行うことができるため、各国の商標担当官庁宛てに個別直接に行うよりも、スムーズに商標登録まで進めることができるのです。
2016年1月現在、この制度を利用できる国は日本を含め97の国と地域が対象になっていますので、海外展開を目指されている方は、進出予定国がマドリッド協定議定書を署名・発効しているかを確認されるとよいでしょう。
マドプロ利用の条件
マドプロを利用して外国で商標登録していくためには、いくつかの条件・手順があります。
まずマドプロを利用して出願しようとする商標は、日本国内においても出願・登録されている商標である必要があります。またマドプロによって商標出願するにあたっては、指定商品・役務などについて日本国内での商標の登録内容との同一性が求められます。仮にマドプロの手続きと日本国内での商標出願手続きを同時に進めるということであれば、海外での市場展開プロセスも十分に加味した上で内容を精査していくべきでしょう。
すでに国内で商標が登録されている場合でも、日本国内と海外で商標の使用方法、表記方法に違いが出てくるということであれば、見直しも必要になってきます。日本語表記からアルファベット表記への変更という点はもちろんのこと、この際現在の商標に相手国の文化上タブーにされているマークなどが使われていないかも確認しておくべきでしょう。
マドプロ出願のメリット
マドプロを利用して外国商標を出願していくことの最大のメリットとしてあげられるのが手続きの簡素化です。これまで外国で商標出願していくためには、相手国の法制度を調べた上で個別に窓口手続きをする必要がありましたが、マドプロでは日本の特許庁を通じて行うことができます。
またマドプロを利用するにあたっての言語は英語で統一されていますので、各国の言語に合わせて申請書類を作り変える・文章を翻訳していくという手間もなくなり、翻訳費用を安く抑えられるというメリットもあるというところです。
そして商標出願・登録後の管理も国ごとに個別に行わなくてもよくなりますので、商標の管理コストも軽減されていきます。中小企業にとって海外展開はリスクも高く、様々な場面で想定外の費用もかかってきますので、現地でのビジネスに注力していくためにはコストの軽減はありがたいところです。
登録期限についても、各国の商標出願制度を適応した場合には審査期間が限定されていないため登録時期が不明確です。しかしマドプロ出願では、各国の審査期間が制限されているためある程度予測がつきます。これらのメリットを踏まえると、国際商標登録を行う場合は断然マドプロ出願の利用が有用だと考えられるでしょう。
ただし、国際商標出願には国内ですでに商標登録がされているという条件に注意してください。また、マドプロでは商標登録が出来なかった場合の拒絶対応については、当該国の代理人による手続きが必要とされる場合があります。
国内と海外の商標出願を同時に行う
近年、国際登録出願は米国や韓国だけではなく、欧州共同体商標制度によってヨーロッパでも利用できるようになり、日本企業や個人の事業者でも特許事務所を通じて簡単に国際商標登録が出来るようになりました。
今後は国外においても、自社の知的財産権を守る上で商標登録は必須となるでしょう。その際に海外の他企業に商標を独占されないためにも早めの行動が重要とされています。
尚、日本国内での基礎出願とマドプロ出願(国際商標出願)を並行して行うことも可能です。海外での展開も考えているのであれば、国内の商標登録と同時に海外への商標出願も進めると良いでしょう。