「LINEスタンプ」めぐる商標登録の問題
「LINEスタンプ」大ヒットの背景は
デジタル通信機器類の発展は実に目覚ましいものがあります。特にスマートフォン(スマホ)やタブレットに代表されるモバイル式の通信端末器の現在の世相を数十年前に正確に予測していた人は少ないでしょう。今や小学生どころか就学前の幼い子供でさえ使いこなすというスマホですが、携帯電話としての用途よりも、インターネット閲覧やゲーム、メール交換などの目的で使用されることが多いようです。
特にメール通信に関しては、以前は単純に文字情報のみのやり取りだったのが写真通信(写メール)が加わり、スマホの登場と共に画期的な新しいメールアプリが大ヒットとなり、若者のみならず中高年層にまで広がる一大ブームを巻き起こしています。
その代表格アプリが「LINE(ライン)」です。LINEが大ヒットした要因は、その使いやすさと高い視認性にあります。そしてもうひとつのポイントが「LINEスタンプ」の存在です。最初はメール文に添えるちょっとしたイラストだった「LINEスタンプ」が、やがて脇役から主役に躍り出て、簡単なやり取りなら文章なしで「LINEスタンプ」だけで意思疎通が可能という面白い現象が起きています。
日本にはパソコン黎明期のネット掲示板から派生して今や国際共通語ともなった「絵文字」文化が下地にあり、これに漫画やアニメ、ゲームそして「ゆるキャラ」などの「KAWAII」文化の広がりが「LINEスタンプ」の流行の源泉にあるとみてよいでしょう。
「LINEスタンプ」は商標登録できるか?
さて、一般に「LINEする」という言葉が違和感なく使われるようになった現在、LINE通信で使用される「LINEスタンプ」について、商標登録の可否についての質問が数多く寄せられているとのことです。
「LINEスタンプ」は「LINE株式会社」が運営する「LINEストア」で売買されており、中には数百万円の報酬を得たクリエイターもおり、有名タレントが自身をカリカチュア(戯画化)したキャラクターを「LINEストア」に登録してファンに販売(1件200円ほど)する現象も増加してきています。自作のイラストや画像を制作し、それをLINEに応募。LINEはそれが「商品」として適したものかを審査し、同時に著作権侵害などに抵触しないかを調査した上でネット販売の可否を決めるという流れになっているようです。
そして実際に販売されるとクリエイターには規定のマージンが支払われるというシステムは、普通のイラストクリエイターと出版社との関係と同様です。イラストなどはそれがネット上に使用されるものであっても、創作者に著作権が与えられ、それは著作物が公表された時点で発生し、商標のように審査や登録などは必要ありません。
それでは自作の「LINEスタンプ」を商標登録したい場合にはどうなるのかという問題ですが、「LINEスタンプ」のサービス規約によれば、第6項1に「本サービスに関連する一切の権利(著作権、商標権、特許権等の知的財産権を含みますが、これらに限りません)は、当社又は当社に権利許諾した第三者に帰属します。」とあるので、基本的にクリエイターが自作の「LINEスタンプ」を自分で商標登録すること自体は問題なしといえるでしょう。
今後、LINEの規約が変わる可能性も
「LINE株式会社」側が著作権や商標権の権利譲渡をネット販売での条件としないことについては不思議な気もしますが、そもそも「LINEスタンプ」はLINE通信で使用されてこそ、その存在価値があることと、商標の出願や登録には少なくない費用がかかることもあり、膨大な数がある「LINEスタンプ」をいちいち商標登録することは非現実的として、最初から権利譲渡は想定していない、ということかもしれません。
ただし同規約の3項には「規約の変更」が盛り込まれており、将来的には著作権や商標に関して現状が変化する可能性がゼロとはいえないようです。これから自作の「LINEスタンプ」の販売を計画しているクリエイターは、もっと幅広いビジネスをしたい希望があるのなら、同時に商標出願することも考えてみてよいかもしれません。