石川県の「小松うどん」が晴れて地域団体商標に決定
地元の名産ブランドの知名度を上げ地域振興につなげるのと同時に、粗悪な類似商品を一掃する目的で導入された「地域団体商標」ですが、制度開始からすでに12年が経過しています。
10年ひと昔といいますが、2018年の年明け早々に加賀百万石の地にまた新しい「地域団体商標」が誕生しました。今回は石川県の「小松うどん」登録決定の件と、その舞台裏に迫ってみましょう。
芭蕉も絶賛した名物うどん
石川県の名産麺類料理として名高い「小松うどん」は、江戸時代初期の加賀藩の時代から伝わる独特の製法で作られて行きた名物うどんで、奥の細道の旅の途上で食した松尾芭蕉が「殊に珍敷(めずらしき)乾うどん」とその美味さを書き留めたことでも有名です。
小松うどんが現在のように庶民に身近な存在になったのは明治時代終盤頃からで、鉄道の開通と共に小松市にうどん店が次々に開店したことで評判が口コミで浸透し、このブームが石川県全域に広がったことで「石川県に『小松うどん』あり」とまで称されるようになったと言われています。
2010年には折からの「グルメブーム」に乗って県全体で「小松うどん」のブランド化に力を注ごうという気運が高まり、小松市役所の商工労働課が音頭をとり「小松うどんつるつる創研」というNPO法人が組織されました。「小松うどんつるつる創研」では「小松うどん定義八か条」を作成し、正しい製法せ作られた「小松うどん」の価値を高め、模倣品の根絶に向けて精力的に活動しています。
現在は約70店舗が加入している「小松うどんつるつる創研」では「小松うどん」というブランドをさらに全国区にするとの目的で「地域団体商標」の出願を決断し実行に移したことが、2018年1月に、晴れて登録査定に結びついたというのが、今回の登録決定までのおおまかな経緯です。
石川県の「地域団体商標」
石川県は北陸4県の中でも、特に「地域団体商標」についての関心が高く、これまで以下のような地域ブランドが出願され、登録の栄誉に輝いています。
美術・伝統工芸ブランド | 加賀友禅・加賀蒔絵・輪島塗・金沢箔・九谷焼・小松瓦・牛首紬・能州紬 |
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温泉ブランド | 片山津温泉・粟津温泉・山代温泉・山中温泉・和倉温泉・湯桶温泉 |
仏壇ブランド | 金沢仏壇・七尾仏壇・美川仏壇 |
食材・調理品ブランド | 大野醤油・能登大納言・加賀みそ・加賀野菜・加賀太きゅうり・加賀れんこん・沢野ごぼう・中島菜・能登牛・能登ふぐ・能登丼 |
地元の熱意が登録実現に結実
以上、さすがに北陸の随一の古都・百万石の国柄だけあって、今回の「小松うどん」を加えると実に29品目の商品・役務が地域団体商標として登録されることになります。この数は2018年4月現在で、京都府の62件、兵庫県の36件に次いで全国第3位となっており、石川県における地元ブランドにかける誇りと情熱の高さを示しているといえます。
「地域団体商標」制度においては、出願から登録査定まで1年以上かかることはざらにあり、特許庁においても通常の登録商標よりもさらに厳格かつ慎重に審査を進めていることがうかがえます。いくら地元で有名なブランドと主張してみても、地域名と商品(役務)を組み合わせただけのものでは登録査定を受けることはできません。
真に地元民に愛され慕われてきた、という歴史の重みが審査の対象になっていることは疑う余地がなく、今後も長く継承されていくものであることが明白でなければ「地域団体商標」の名に値しないといっても過言ではないでしょう。今回の「小松うどん」は、地元の公共機関がNPO法人を設立してトライしたという、ブランドに込める熱意が結実した好例といってよいでしょう。