商標法違反容疑でiPhone修理業者を逮捕
日本では異常な人気を誇る「アイフォーン」
デジタル機器類が普及するにつれて、知的財産権の分野でもそれまで想定されていなかった問題が頻繁に報道される時代となってきて。その一つに「スマートフォン」があります。現在のスマートフォンや携帯タブレット端末器を開発した世界的なトップブランドが米国アップル社の「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」です。特にスマホブランドの「アイフォーン」の日本でのシェアは他社を圧倒しており、価格帯が比較的高額であるにもかかわらず、2017年上半期のデータではなんと約70%という独占的なシェアを誇っています。
この数値は、本家米国の3倍に相当し、世界シェアのトップが韓国の「SAMSUNG(サムスン)」であることを勘案しても、日本での「アイフォーン人気」は異常とさえ思えるほどです。もともと日本人には新分野のアイテムについては、最初に開発されたブランドにこだわる傾向が強いといわれており、それがスマートフォンには顕著に表れているといえるかもしれません。
アップルとサムスンとの特許紛争
さて、アイフォーンをめぐる知財の係争については、アップルとサムスンとの特許紛争が有名です。その構図をおおまかに述べると、アップルが所有するいくつかの特許権をサムスンが侵害したことによって、アップルが甚大な金銭的損害を被っているとして争われたものが大半です。つまり、アップルの言い分としては、同社の特許をサムスン側が無断で剽窃し不当な利益を上げている、というものでした。
また、サムスンのやり方は、仮に裁判沙汰となっても決着までかなりの日数がかかるため、判決までの期間に相当な金額を儲けることで結果的に損害賠償額を上回る利益を出すということもしばしばでした。これは中国にもいえることですが、急速に経済発展を遂げた韓国社会には、知財に対する企業倫理がまだ完全に確立されていないことから生じる企業体質の問題が根底にあるのかもしれません。
アイフォーンの修理をめぐる商標違反問題
ところで、日本で大人気のアイフォーンの商標をめぐる事件が起きて世間を騒がせました。これは、2017年の5月にアイフォーンのニセ部品を販売してた修理店の「アップルズドクター」の責任者ら4名が、商標法違反にて京都府警に摘発され逮捕されたというものです。これは、アップル社がアップルズドクターを提訴した民事案件ではなく、刑事事件であることに驚いた人も多いことでしょう。
商標などの知財を営利目的で剽窃・摸倣することは、他人の財産を盗む窃盗と同様の刑事犯罪であり、ときには莫大な金額の損害が発生するだけでなく、社会的影響の大きさから考えても、商標法違反は普通の窃盗事件よりも重大な社会的犯罪ともいえるのです。
「アップルズドクター」は「アップルの正規ショップよりも安価にアイフォーンの修理ができる」ことを謳い文句にして売上を伸ばしていました。ただし、端末器を単に修理するだけのサービスであれば罪に問われることはありません。「アップルズドクター」は経費節減のためアップル社の正規部品ではなく、それを模造した部品を修理に使っていました。そしてこの模造部品に付いていたアップルのリンゴのロゴマークが「商標法違反」として摘発された、というのが今回の事件のあらましです。
アップルとアイフォーンという超人気ブランドに便乗したビジネスに対し、これを放置しておくと全国に同じような形体の店舗が増え、いずれは大問題に発展するという危惧が行政府と警察当局側にあったという見方もできるでしょう。
非正規の修理店では「安価だが修理不備」というユーザーからの苦情も少なからずあることから、この事件を契機にして「安易に非正規の修理店に持ち込むべきではない」という認識がモバイル通信器やパソコン、タブレットなどのユーザーに広まることとなるかもしれません。