歴史上人物の商標登録と注意点(利害関系)について
前回は「歴史的人物の名称は商標登録できるのか」を紹介しました。今回は歴史上人物の商標登録で注意しなければならない、関係者との利害関係にについて具体例を挙げて説明しています。
「羽柴秀吉」という名前は、「豊臣秀吉」になる前の名前です。「豊臣秀吉」ほど有名ではありませんが、「羽柴秀吉」は歴史上の人物として知られた人物です。人名の登記は、商標法によって基本的に登録することはできないことになっています。そこで歴史上の人物についても原則商標登録することはできません。しかし、歴史上の人物については一定の基準を満たしているのなら、商標登録ができるとしています。
人名の商標登録と関係者の利害関係について
実際に「豊臣秀吉」のほうは商標登録されています。その登録の理由として歴史上の人物の中でも全国的にスバ抜けて有名な名前として知られているものです。そのことから指定商品や商品役務で出願する人の関係が明確であることを理由として、「豊臣秀吉」の場合、子孫との関係よりも発祥地に関係があったとされているようです。「豊臣秀吉」は、現代でも普通名詞化せずに識別力をもつことを特徴としているのです。
それでは「羽柴秀吉」についてはどうでしょうか。「羽柴秀吉」は故人ですので、商標法の規定によって本人の承諾を得る必要はありません。また商標登録では子孫などの関係や商品や役務として使用する者などの利害について検討されなくてはなりませんが、「羽柴秀吉」の場合では、その制約が少ないものといえそうです。
現代になって「羽柴秀吉」の名で選挙に出た人がいましたが、もしこの選挙に出た人が商標登録をしようとした場合、商品や役務との関係が明確であり、それが公序良俗に反するものでないなら商標として登録することは可能でしょう。
歴史上人物の商標登録で注意すべき点
しかし、羽柴秀吉について商標として登録した場合、「羽柴秀吉」は「豊臣秀吉」と同一の人物ですので、「豊臣秀吉」の商標をもつ関係者がどのように思うのかということが問題となりそうです。「羽柴秀吉」が「豊臣秀吉」のように有名ではなくても、この使用においては「豊臣秀吉」との関係があると考えられますので、商標登録ではその点について特に注意が必要となることでしょう。
このように歴史上の人物の名を使用するときは、関係者が明確で利害関係や子孫などに迷惑がないのであるなら、その人物にもっとも関係にある者が商標として登録することができるようになるとしています。そのことから、この場合においては歴史的人物を商標として独占できるという効力をもつことになるのです。