フェラーリ社が中国で著名商標を拒絶された理由
以前、イタリア自動車メーカのフェラーリ社は自社のロゴである「FERRARIと跳ね馬」の類似商標について、中国の国家商標評判委員会を起訴しています。約10年間も争うことになり膨大な費用を費やしたこの裁判では、フェラーリ社が敗訴する結果となりました。このように海外でも識別力の高い有名ブランドのロゴが、中国で著名商標を拒絶されることがあります。
1995年に中国のデパート「家健経営部」がフェラーリ社のロゴに類似した商標を申請しています。これに対してフェラーリ社は当該商標が自社の「FERRARIと跳ね馬」の図形商標と類似していることを指摘して、中国商標局に異議の申し立てを行いました。しかしこの異議を国家商標評判委員会が拒絶したことで、フェラーリ社の起訴で裁判が開かれています。
フェラーリ社の著名商標が拒絶された理由
フェラーリ社の主張は、同社の商標である「FERRARIと跳ね馬」は世界的に高い知名度があり、中国国内でも識別力を有しているため類似商標の登録出願は取り消されるべきであるという内容です。多くの国では賛同に足る内容ですが、北京市第一中等裁判所での判決ではこの異議を認められず、フェラーリ社の著名商標は拒絶されてしまいました。裁判所が出した拒絶理由では、中国における使用や宣伝状況を証明する資料を提出していないため、フェラーリ社の訴えを取り下げたとしています。
欧米企業が中国で事業を展開する場合、同様に明らかな商標侵害に対して裁判で勝訴出来ないといった問題が起きています。ブランド性の高い製品を販売する企業にとって、類似商標の問題はユーザーの信頼を損なう可能性があるので注意が必要です。特に近年では、類似商標を意図的に登録して利益を得る手口が増えており、中国ではこれが合法として扱われるため一般企業では対策が出来ていないことがあります。
中国で商標登録による権利侵害の対策
これに危機を感じた中国議会は、商標権侵害に対する罰則を強化した新商標法を可決しています。しかし大きな影響力を持たないため、今でも各区分への商標登録で保護することが最善とされています。
この商標登録ですが、登録時に不備がある場合には当然その権利を失います。過去の事例でも中国で商標侵害を訴えた際に、商標登録審査の書類不備で敗訴した企業がいくつもあります。そうならないためにも、商標登録について専門知識を備えた弁理士、もしくは特許事務所に相談をしましょう。