商標と商号の違い(法律・役割)と関係性について
目次
- 企業における「商号」と「商標」について
- 商号に関する法的規定と制約
- 商号の制約内容 - 企業の商号と登録商標との相違点
- 「商号」と「商標」の社会的な意義
- 「商号」と「商標」の独占権と権利期間 - 企業の商号を商標登録する場合の要点
- 「商号」は「文字商標」として出願・登録できる
- 商号を有名商標に変更した企業
企業における「商号」と「商標」について
商号に関する法的規定と制約
「商号」と「商標」。企業にとってどちらも大事なものですが、両者は混同されることもよくあるようです。商標・商号は法によって保護されているものですが、商号と商標では法律が違います。商号は商法によって保護され、商標は商標法によって保護されています。まずは「商号」の方から解説していきましょう。
企業の「商号」とは端的にいえば「企業・団体の名前」です。
会社を設立するには日本の「商法」が規定する「会社法」及び「商業登記法」にて定めれた手順に則って公的な手続をせねばなりません。そして会社を登記する際には、当たり前ですが「社名」を届け出る必要があります。一般に「会社名」とか「社名」といわれる会社の名前が、法的には「商号」と呼称されるわけです。「商号」を決めるにあたっては、次のようにいくつかの法的な制約を受けます。
商号の制約内容
①同一営業・同一営業所での 複数商号の禁止 |
一社で複数の商号を持つことは可能ですが、 同一営業をする同一の営業所が複数の商号を名乗ることはできません。 |
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②会社の種類に準じた文字を加える | 「株式会社」や「合名会社」「合資会社」など会社法が規定する会社の種類に準じた 名称を商号の前か後に付け加える必要があります。 |
③誤認をきたす名称は禁止 | 他社の商号やあるいは他社の関連企業と誤認されやすい名称は禁止されます。 |
④業種を特定できる呼称表記を 義務付けられた業種がある |
「銀行・信用金庫・労働金庫・保険会社・農協・漁協・生協・信託会社・無尽会社」 などの、信用維 持の確保が必要と規定された法人は、 「○○銀行」など誰もが業種を特定できる呼称の表記が義務付けられます。 |
また、これらの業種以外の法人が「銀行」などの文字を商号に入れることはできません。
以上のように、商号は会社法の規定に準じなければならず、これに違反すると「100万円以下の過料」が課せられることになっていますので、これから会社を設立する場合には、安易なネーミングは禁物です。
企業の商号と登録商標との相違点
「商号」と「商標」の社会的な意義
企業における商号と商標は「似て非なるもの」と表現することができます。両者とも全国規模で事業展開を図る企業にとっては必要不可欠な、いわば大衆にアピールするための象徴的存在と呼んでも大げさではありません。そこで、ここでは商号と商標との相違点と両者の特徴・特性を述べてみましょう。
会社の正式名称となる「商号」は所在地の法務局に届け出て登記します。これを「商号登記」と呼び、所在地が同一の地域でなければ他社と同じ商号でも登記は可能です。日本各地に同じ商号の企業が数多くあるのはこれが理由です。
一方、商標に関しては企業・団体の所在地に関係なく全国一律に特許庁の管轄です。そして商号が届出形式に合致さえしていれば登記されるのに対し、商標は「出願・審査・登録」という手続があり、実体審査によって審査官より「登録商標に値せず」と判断されれば「拒絶査定」を受け登録商標としての権利を取得できないこととなります。
商号は企業の呼称を登記することにより、税法その他の法的制約を受けるための一種の識別呼称ですが、商標に関しては使用独占権を有するために審査を受けて登録する識別標章(マーク)なので、両者の社会的意味合いは全く異質であるといえるでしょう。
「商号」と「商標」の独占権と権利期間は
特許庁に登録済の「商標」には、他社(他者)に使用を許さず自社(自分)だけが使用できるという「排他的独占権」がありますが、商号は前述したように禁止されているのは同一の地域(東京都の各特別区および全国の各市町村)にて同一の商号登記をすることだけなので、商標のような日本全国に強力な独占権はありません。ただし、消費者が混同をきたすおそれのある著名な企業の商号に関しては、「不正競争防止法」によって登記を差し止めることが可能です。
「商号」と「商標」両者の違いは、その表示方式または内容と、権利が持続する保護期間にまでおよびます。
「商号」は文字のみで構成されることが条件ですが、商標は「文字・図形」の他にも「立体・音・色彩ホログラム」など、その内容は多岐にわたっており、無形商品として「サービスマーク」も含まれます。
次に権利の保護期間ですが、「商号」は一度登記すればその法人が事業を存続させている限り無限に持続します。
対して「商標」の権利期間は登録から10年ですが、10年毎に更新手続をすれば永久に独占権は持続できます。したがって「商号」「商標」ともに権利保護期間は実質的に無限といえるわけです。
企業の商号を商標登録する場合の要点
「商号」は「文字商標」として出願・登録できる
「法人の呼称」つまり「企業や団体の商号そのものを商標登録できるか否か」という設問に対する答えは「イエス」です。商号は文字表記に限定されており、特許庁に登録できる文字商標に相当するからです。
「商号」と「商標」をめぐってよく問題となるのは、ある商号を登記したとしても、他社がすでに同じ名称を商標登録していたパターンです。この場合、仮に同一の商号がなく無事に商号登記ができたとしても、今度は商標法によって実質的に使用ができなくなることが起こりうるからです。商号を登記する際には、他社の商号だけでなく、登録商標にまで事前調査の網をかけておくことが重要なのです。
商号を有名商標に変更した企業
日本の企業においても、本来の社名=商号よりも自社の商品の商標の方が有名になり過ぎて、とうとう商号を登録商標と同じ呼称に変更してしまった、という実例がいくつも存在します。
家電機器メーカー | 「早川電機工業」→「シャープ」 「松下電器産業」→「パナソニック」 |
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オーディオ機器メーカー | 「トリオ商事」→「ケンウッド」(現・JVCケンウッド) |
カメラ・光学機器メーカー | 「旭光学工業」→「ペンタックス」(現・リコーイメージング) 「日本光学工業」→「ニコン」 |
男性化粧品メーカー | 「丹頂」→「マンダム」 |
自動車メーカー | 「富士重工業」→「SUBARU」(2017年4月より) |
以上が商号を登録商標と同じにした代表的企業です。一般大衆をエンドユーザーとした消費財メーカーが大半を占めており、テレビや雑誌などのマスコミで大量の広告宣伝をしている企業が目立ちます。
これらの企業は、いかに一人でも多くの消費者に自社ブランドを認知してもらうかを事業発展の最重要課題としています。そこで、業種をあらわす漢字表記よりも、より消費者が慣れ親しんできる商標に企業のイメージを統一化することでブランドイメージをさらに高めるためにとった戦略といってよいでしょう。
ローマ字表記もOK
また、商号は代えてはいないものの、商号の略称を商標登録し、その商標を通常の商号呼称として用いている企業に、「京都セラミック=京セラ」や「東洋陶器=TOTO」などがあります。
商号として以前は認められていなかったローマ字表記が、2002年から使用できるようになってからは、自社ブランドのローマ字をそのまま商号とする企業が増加している傾向にあります。特に世界市場を開拓しようとするグローバル企業においては、起業時に世界に通用する商号と商標を同時に考案する必要性が今後も高まることでしょう。
会社のロゴマークと商標・商号
会社のロゴマークは、会社の顔となるシンボルマークとしての役割をもっています。
ロゴマークは、イメージ効果を上げる効果をもつものですが、商標登録されることによってロゴマークは法によって保護されるようになります。
商品やサービスはブランド化すると真似されることがありますので、ロゴマークや商品は商標登録しておかないを保護することはできません。 そうしないと市場においてコピー商品が出回ったときは手が付けられなくなってしまいます。さらに第3者に商標が登録されてしまった場合には、逆に販売を中止させられることも考えられます。このように会社名やロゴマークは、営業活動において大きく影響するものであることから登録を怠ってはならないものです。
商標と商号の違い
商号については法務局で登記をする会社名で、商標は特許庁に登録するサービス名などとなります。 商標では文字だけでなく、図形や色、記号などを使って登録することができるという特徴があり、それがサービス名、会社名であってもサービスマークとして申請できるものとなります。
そこで商標ではイメージキャラクターやサービスの名前、会社では会社マークを保護することができます。 商標の登録期間が10年となっていますので、更新する必要があることを忘れてはなりません。これに対して、商号は登記されている間は保護されますので更新などをしなくても使用することができます。
マークを商標登録する事による利点
商標の利点は、登録されると日本全国で効力をもつことになりますので、会社マークなどのサービスマークについて独占的できるというメリットをもっています。
これは、同一市町村内において同じ商号が登録できないという商号に比べて広い効力を持つものとなります。
つまり商号は会社名を守るだけのものですが、商標は商品やサービスを保護するものとなりますので、実際に営業を行なう際は他社と区別が容易にする効果をもち、市場における競争力を高めるものとなってくれることになるという役割をもっているのです。