エルメス社の中国における商標権紛争
中国での商標に関する問題が頻繁に話題となりますが、今回はその中から有名ブランド「エルメス」の商標出願で起こったトラブル事例を紹介します。 フランスのエルメス・インターナショナル社「エルメス」は、中国においてブランド名を「愛馬仕」と表示します。それとは他に中国企業の「達豊製衣有限公司」では、馬と瑪の文字が異なる「愛瑪仕」を既に登録商標としていました。
エルメス社の異議申し立てと裁判所の判断
当時エルメス社は、ブランド名「HERMES」で化粧品・皮革製品や衣料品等に商標登録を行い、中国語表記である繁体字「愛馬仕」および簡体字を同分類第25類「服装、靴、帽子」に出願を申請しました。その直ぐ後に、達豊製衣有限公司は商標国際分類の服装、コート、上着などを指定商品として商標「愛瑪仕」を追加で出願したようです。エルメス社はこれに対して「HERMES」の「愛馬仕」と「愛瑪仕」がよく似ているとして、商標に誤認混同を招くことを主張し、「愛瑪仕」を使う中国企業の達豊製衣有限公司に異議の申立を行ないました。
しかしこの異議の申請は不成立となり、エルメス社は異議再審請求したのですが請求を却下されています。これについて中国の裁判所では、エルメス社の「愛馬仕」は「愛瑪仕」の登録出願日よりも遅く、「愛瑪仕」が不当な手段で取得したという証拠が十分ではないことを理由に請求を却下したと言論しています。また中国においては、「愛瑪仕」を出願したとき、エルメス社の「愛馬仕」が有名であったとはいえないとして、エルメス社の証拠を否定するようになっています。
中国では早期に商標登録することが重要
これまで流れを見ると中国らしい判決が出されたと言えるでしょう。自国の企業に有利な結論はアップル社とのトラブルでも見られたもので、このときは和解のために多額の費用を必要としています。
この事件では、エルメス社の「愛馬仕」が中国語表記で長期間使用していたとしても、その商標登録を早い段階で行なうべきであったことが改善点として挙げられます。今回の事例に限らず、国際商標では早期に商標登録を行い万全の状態で事業展開を進めることが望ましいでしょう。もしも急いで商標登録が必要な場合には早期審査制度を利用すると良いでしょう。