高級ブレーキ「ブレンボ」のロゴ無断使用で逮捕
有名なロゴマークの盗用による「商標法違反事件」というと、高級ブランドの「時計」や「バッグ」または比較的簡便に製造できる「菓子類」などの模倣製造販売事件を連想しがちです。
ところが、意外な分野での事件もまれに起きています。それがこのたび発覚したイタリアの高級ブレーキメーカー「ブレンボ」のロゴマーク盗用事件です。
今回は、この事件の背景を探ってみましょう。
イタリアの高級車に使用される有名ブランド
今回の報道に触れて「ブレーキにも有名ブランドが?」と驚いた人も多いことでしょう。今回話題となった「ブレンボ」は1961年に創業されたイタリアのブレーキメーカーで、自動車の世界では「知る人ぞ知る」世界的なカー部品ブランドです。F1を初めとするモータースポーツのレースカーにも採用され、ヨーロッパの高級乗用車には必ずといってよいほどブレンボの純正部品が使われていることから、「ブレンボ」は高級車の高級部品の代名詞ともなっているのです。
事件が発覚したのは2018年4月で、同5日に愛知県警は岐阜県在住の会社社長と愛知県在住の会社員の2名を商標法違反容疑で逮捕しました。警察発表によれば、両容疑者は「ブレンボ」のロゴマークに類似したマークを付けた「ブレーキキャリーバー」と呼ばれるブレーキ部品のカバーを製造し、大阪の部品販売業者へ87個を約7万3千万円で売却したということで、二人は容疑を認めているとのことです。
今回の事件は、ブレーキ部品そのものではなく「部品カバー」であることが注目されます。確かにブレーキ部品ではなくカバーならニセのロゴマークを付けて製造することは比較的簡単なので、一回ロゴの原版さえ作ればそれほどの経費をかけずにかなりの数のカバーを製造することが可能です。
稚拙ながらも盲点を突いた犯行
もっとも、「ブレンボ」製の正規品の「ブレーキキャリーバー」にはカバーがないことから、他の製品をブレンボ社製に偽装するために同社ロゴを付けたカバーを製造した、ということのようです。
たとえば、安価なバッグなどを模造したブランドの袋に入れて販売するという稚拙な手口のように思えますが、今回の事件は自動車のブレーキ部品というブランドを視認しにくい商品であったことが、大胆な犯行の盲点ともなっていたようです。
同県警は消費者からの苦情を受けて内偵をした結果、同年2月から3月にかけて大阪の販売店の店長以下8名を逮捕し取り調べた結果、模造品製造元をつきとめ今回の逮捕に至ったというのが、おおまかな経緯です。
求められる有効な対応策
ユーザーはこのロゴマークを見ただけで、その信頼にお金を払うわけで、今回逮捕された両名は、このような消費者の信頼を裏切る卑劣な行為を犯してしまったことになり、厳罰に処せられると共に、二度と同様の犯行を起こさないように対策を講じることが求められます。
というのも、一度商標法違反を犯した人物が、再犯するという実例がかなり多いのです。この事実は、商標法違反という犯罪を彼らが軽く見すぎていることの証明でもあります。罪の意識が希薄で「今度こそ捕まらないようにうまくやろう」という気持ちがあるのでしょう。
窃盗や強盗などの刑事犯罪に比べて商標法違反はそれほど罪悪感のない犯罪なのかもしれません。初犯では実刑を免れ執行猶予が付く判決が多いことも再犯が多いことの大きな要因となっているかもしれません。今回の事件は外国の有名ブランドを日本人が模倣するという内容だけに、このようなことが続けば国際的な信用にもかかわりかねません。
また、日本のブランドを模倣し続けるアジアの国に対しても示しがつかなくなるおそれもあります。歯止めがない商標法違反事件に接するたびに、有効な対応策がないものかというため息が尽きません。