アップル中国で提訴。中国市場の難題
革製品のIPHONEブランドをめぐってアップルが敗訴
iPhoneブランドのスマートフォンを世界展開するアップルがまたしても中国で知財トラブルに巻き込まれ、敗訴という結果に終わりました。訴訟の相手となったのは、新通天地というメーカーですが、同社では2007年に革製品のブランド名として「IPHONE」の商標を登録して革製品を展開していました。最初からアップルのiPhoneを意識してネーミングしたのかは分かりませんが、アップルがアメリカでiPhoneの販売を始めたのも2007年ですので、なんらかの意図はあったのかもしれません。
アップルは2009年から中国でiPhoneの販売を開始しましたが、新通天地が持つ「IPHONE」の商標権を問題視し、2012年に中国の商標担当省庁に異議申し立てを行いました。しかし、2013年に敗訴、控訴はしたものの、高等裁判所でも同様にアップルの訴えを退ける判決を2016年5月に下しました。アップルは上級裁判所での再審理を求めていますが、先行きは不透明です。
アップルは中国内で電子応用機械器具の区分でiPhoneの商標を登録していますので、スマートフォンの販売自体に支障が出ることは少なさそうですが、iPhoneケースなどの関連小物の展開を自社でコントロール・ブランド管理していくのは難しくなりました。手痛い判決と言えます。
今回の新通天地との訴訟だけではなく、アップルは中国で様々な知財トラブルに巻き込まれています。
2016年にも、アップルのiPhone6のデザインが中国現地メーカーである佰利の製品デザインと類似、同社のデザイン特許を侵害しているとして、販売停止を命じられています。アップルが販売停止命令に異議を申し立てたこともありました。
中国市場は知財リスクが高い
アップルに限らず、様々な企業が中国市場で知財トラブルに巻き込まれています。特許庁がとりまとめた模倣品被害調査報告書でも、商標に関する模倣品被害は中国でのものが最も多く報告されています。
また、中国は周知商標に関する取組が遅れているとして、WTOの法令レビューで日本・アメリカ・EUから指摘を受けています。商標に関する国際ルールであるパリ条約、TRIPS協定では、国際的に有名な商標(周知商標)について他者から登録出願があったときは拒絶あるいは本来の権利者が抗弁できるように求めているところです。
中国側でも周知商標の保護に向けた法整備は進めているようですが、2014年に施行された新商標法ですら、中国内で公衆に熟知されてることを周知商標と認める条件としています。このため、いくら国際的に有名な商標であったとしても、中国内での認知度を立証できない限り、周知商標と認めてもらえないのです。今回のアップルの商標に関する訴訟についても、新通天地が商標出願した2007年段階では中国内でiPhoneはアップルの製品名として公衆に熟知されなかったとして、訴えを退けられています。
加えて、中国には地方保護主義の問題も指摘されています。地方行政機関によっては、条約や法制度よりも模倣品を製造する地元業者の利益を優先する担当者もいると不公正貿易白書で報告されています。
トラブルを避けていくためには
中国市場でのトラブルを避けていくためには、事前対策を講じていくことが重要となります。日本市場の情報はインターネットなどを通じてすぐに中国に伝わっていきますので、将来的に中国市場での展開を検討しているような商標であれば、日本国内での商標出願と同時に中国内でも手続きを進めた方が良いでしょう。
中国の商標制度上、第三者による抜け駆け出願を防ぎきることは難しいところです。抜け駆け出願が判明した場合は、異議申し立ての手続き、訴訟用の証拠集めを進めていくことになります。第三者による抜け駆け出願、模倣品を放置しておくと自社ブランドの信用も損なわれていきますので、専門家の協力も得つつ、対策を進めていきましょう。