巨額の投資がされたドメイン「.app」と商標の関連性
インターネットの住所であるURLには「ホスト名」と呼ばれるスペルの語尾に、必ず「ドメイン」と呼ばれる文字列が配置されています。ドメインには利用するユーザーの所属分野や属性によっていくつかの種類に別れており、ドメインを見ればどのような立場のユーザーなのかが分かります。
最近、新しいドメインに関して商標にまつわる興味深い報道がなされました。今回は、ドメインと登録商標の関連性について語ってみましょう。
「ドメイン名はネット資源」という考え方
現在、分野別のドメインには以下のような種類があります。
- ○○.com・・・企業など商用サービス
- ○○.net・・・ネットワークサービス
- ○○.org・・・非営利団体
- ○○.biz・・・ビジネス関連
- ○○.info・・・情報提供者
以上が、通常使用されているウェブサイトやブログあるいはメールアドレスのドメイン名で、gTLD(ジェネリックトップレベルドメイン)と呼ばれ、この他を含めると現在21種類あり、世界中どこからでも登録することが可能となっています。このことから、gTLDはいわばネット上の住所の大分類を示す表記といえるでしょう。
gTLDは個人や団体・企業などが一般的に理想している代表的ドメインですが、この他にも数多くのドメインが存在しています。欧米先進国においては、ユーザーへの訴求力の高いドメインには取得希望者が殺到する傾向が強まってきていると同時に、「ドメイン名はネット資源である」というコンセンサスが確立しています。
巨大IT企業が大金で落札した新ドメイン
米国には民間の非営利法人「ICANN」1998年に設立され、世界中から多くのネット関連事業者が参集し、活発な活動が行われています。ドメイン名の管理・監督もICANNの重要な活動の一つであり、新ドメインに関してはオークションにて落札者を決めるという仕組みとなっています。そして2015年2月に開催された「gTLDオークション」では当時の最高額となる約30億円もの大金で、アプリ用ドメイン名の「.app」が落札され世界的なニュースとなりました。
落札したのは米国の大手IT企業「Google(グーグル)」で、近年のスマホアプリの隆盛によって、同社は今後「.app」の需要が高まるとの予想をしており、巨額の投資もすぐに回収できその後の利益を生むはずとの判断があったと考えられます。このような思い切った決断は、さすがに世界屈指の巨大IT企業のなせる技とも思えます。
サンライズ登録とはなにか
さて、新しいgTLDの取得に関しては、「サンライズ登録」と呼称される「商標権者優先登録制度」が設定されています。これは、一般ユーザーの登録開始の前に、商標権の所有者に対し優先的にgTLDの登録を許諾する制度で、一種の商標権利者優遇措置ともいえるでしょう。
ただし、サンライズ登録に際しては「TMCH」に登録済であることが条件となっています。「TMCH」とは「Trademark Clearinghouse」の略語で、商標権者が所定のデータベースに登録することで他者が取得するドメイン名から商標権を保護するために設けられたシステムです。
なお、サンライズ登録ではドメインネームは「TMCH」に登録した文字列と同一にすることと定められています。前述の、新gTLD「.app」においても、2018年3月30日から登録受付が開始されており、4月19日までの受付期間が終わると、同年5月9日から一般受付が始まります。
多くのIT企業などが「.app」のドメイン取得に殺到することが予想されますが、今回の件に限らず、新規ドメインには今後どのような名称のものが加わるのか予想がつきにくいことから、インターネットを活用した事業展開をしている企業においては、近い将来新規ドメインにて新たなビジネスチャンスが訪れる可能性もあります。すでに登録商標を取得している企業ならびに出願中の企業は、「TMCH」への登録をしておく必要性があるかもしれません。