「青森」商標登録による異議申立て
中国で海外の地名が商標登録されることによる被害が相次いで起きています。日本もその例外ではなく、以前に紹介をした台湾で「讃岐」が商標登録された事例と同様に、りんごや水産物で有名な「青森」も無断で商標登録出願がされていました。
この中国における「青森」商標登録の背景には、青森県から中国本土への輸出が増加傾向にあることから、有力な市場になることが予測されていた事実にあります。当時、青森県の名産物であるリンゴは、香港や台湾で多くの輸出実績があり、中国でも近年の経済成長から高級リンゴの需要増加が考えられました。そんな時に、中国で「青森」の商標登録出願が提出されたため、青森県の農林水産関係団体はこれに異議申立てを行いました。
商標登録の異議申立てについて
中国の商標法によれば、異議申立ては商標登録出願の告示日から3か月以内とされています。「青森」の商標登録出願が告示されたのは2003年4月28日であり、実際に青森県が異議申立書を提出・受理されたのは7月25日なので非常に危うかったのです。もしも、異議の申立てが遅れていたら、中国で「青森」の商標登録が認められてしまい、日本からの輸出が自由に行えなかったかもしれません。
また、この異議で争点とされたのは、「青森」が中国の公衆に知られているか否かです。そもそも中国の商標法では、第10条で「公衆に知られた外国の地名は商標登録を認めない」とされています。この公衆というのが曖昧な要素なのですが、この異議では「青森」の認知性が認められて、無事に商標登録出願の取り下げに成功しています。
海外における商標登録の重要性
知的財産権である商標権の重要さについて、日本国民の多くは海外と比較して認識力が低いとされています。中国で「青森」の商標登録においても、十分な輸出実績とブランド力があるにも関わらず、商標登録をしていなかったのが悪いとも捉えられます。特に中国人は知的財産権を金銭的価値として認識できているので、日本人も少しはこれを見習わなくてはなりません。
商標登録出願は海外でも一般的に先願主義が採用されています。中国に限らず海外進出を計画している事業者の方は、誰よりも早く商標登録しなくてはならないことを覚えておきましょう。