商標の三大機能
目次
- 1. 商標とは
- 2. 商標の三大機能について
- 3. 商標の機能例
- (1) 出所表示機能
- (2) 品質保証機能
- (3) 宣伝広告機能 - 4. 商標を登録するメリット
- 5. 商標登録の流れ(弁理士にお願いした一般的な例)
- (1) 出願商標の決定
- (2) 指定商品・指定役務の決定
- (3) 出願
- (4) 審査
- (5) 登録料納付 - 6. まとめ
商標の機能は、商標法に規定されているわけではありませんが、昔から学説等で活発に議論されてきました。そして、商標の機能は時代と共に変化してきたと言えます。今回は、通常はあまり詳細に述べられることが無い商標の機能について説明したいと思います。
1. 商標とは
商標の機能について考える前に、商標とは何かを確認しておく必要があります。
商標法第2条で「この法律で『商標』とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下『標章』という。)であつて、次に掲げるものをいう。」と規定されていて、商標は標章の一種であることが示されています。「次に掲げるもの」として、「業として商品等に使用される標章」が挙げられています。
言い換えると、標章というだけでは商標ではなく、業として商品等に付けて使用されるものとなって初めて商標と言える、ということです。
2. 商標の三大機能について
商標にはいくつか機能がありますが、最も本質的なものは自他商品等識別機能です。文字通り、需要者に自分の商品等と他人の商品等を識別させるための機能を指します。
そのため、商品説明書や注意書などの文章中に記載されているものは、特徴がなく商品等を識別する態様では表示されていませんので、自他商品等識別機能がなく商標には該当しません。商品自体や商品のパッケージ等に目立つように表示されているものが商標の代表的な例であって、自他商品等識別機能を発揮している状態となります。
そして、この自他商品等識別機能が派生したものとして、代表的な3つの機能が挙げられます。それらは、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能と言われています。以下で説明していきましょう。
(1) 出所表示機能
出所表示機能とは、同一の商標が使用されている商品やサービスは、いつも一定の生産者や販売者から出されたものであることを示す機能をいいます。例えば、菓子について“meiji”という商標が使用されている商品は、一定の生産者から出されたものであることを示しているというだけで、明治製菓株式会社から出されたものであることまでは考慮しない、というのが出所表示機能です。
自他商品等識別機能と類似しており、3つの機能の中では最も重要視されています。
(2) 品質保証機能
品質保証機能とは、同一の商標が使用されている商品やサービスは、いつも一定の品質・質を備えているということを保証する機能をいいます。商標を使用し需要者が信用できる商標であると認識するようになると、権利者も品質・質を厳しく管理し信用の維持に努めるようになります。その結果、商標には品質保証機能が生まれます。
例えば、“TOYOTA”という世界的に有名な商標には非常に大きな信用が含まれており、この商標が付いている自動車等はいつも一定の品質を備えているだろう、と需要者が考えるでしょう。
(3) 宣伝広告機能
宣伝広告機能とは、広告によって商標を大々的に使用することにより、その事業者の商品またはサービスであることを需要者・消費者に伝えて商品等の購入を促進させる機能をいいます。
例えば、今まで聞いたこともなかった商標がテレビCM等で頻繁に目にするようになると、一気に商標が有名になったりします。
最近では、スマートフォン用ゲームの宣伝などで、無名だった社名やゲーム名に関する商標がすぐに知れわたるという実情があります。そのようにして、商標には需要者に商品等を選択・購入しようと思わせる目印となる宣伝機能があります。
近年は、ウェブサイト上で広告宣伝を行う等、宣伝方法が多様化していますので、ますます重要視されている機能になっています。
3. 商標の機能例
コカ・コーラを例にしてみます、「コカ・コーラ」という商標がついているおかげで、私たち消費者はそれがコカ・コーラ社の商品であることが一目で分かり、安心して商品を購入することができます。また、その商品をもう一度購入したい時や友人に紹介する時に、「コカ・コーラ」という名前がついていることによって、簡単に探したり紹介したりすることができます。
消費者だけに利益があるのではありません。商標を使用しているコカ・コーラ社も消費者からの信用を得ることができます。
私たちが商品やサービスを間違えることなく購入できるのは、商標のおかげといっても過言ではありません。商品に商標が付いていない場合、どこから販売・提供されている商品なのかが分からず、もう一度購入したい、知人に紹介したいと思っても、上手く探したり紹介したりすることができません。
企業がせっかくいい商品を作っても、消費者の手元に正しく行き渡らなければ、売れる商品も売れなくなってしまったり、間違ってニセモノや粗悪品を購入してしまったりすると、企業は消費者からの信用を失います。
このように、商標登録された商品・サービスは信用や品質を守り、消費者に安心した商品・サービスを届けるはたらきをしているのです。
4. 商標を登録するメリット
商標の機能により商標に対する信用が大きくなると、需要者が目印であるその商標が付いた商品を選択・購入しようとしますので、商標を登録するメリットは非常に大きいです。
自他商品等識別機能や出所表示機能を有していなければならないのは当然ですが、商標が品質保証機能や宣伝広告機能を持っていると事業の拡大に当たり強い武器になるからです。
他人が所有する商標権の侵害を避けるという理由に限らず、上記のような商標の機能をうまく活用するためにも、是非商標登録出願を行い商標を登録しておきましょう。
5. 商標登録の流れ(弁理士にお願いした一般的な例)
商標登録出願は自分で行うことも可能ですが、商標や指定商品・指定役務の選定など非常に重要な作業がありますので、事業をより確実に発展させるためにも専門家である弁理士に依頼して精査した上で行った方が賢明です。
特許庁印紙料以外に少なくとも約5万円の代理人費用がかかりますが、登録になれば10年間権利が有効ですので大した負担にはならないでしょう。
商標登録の具体的な流れは、以下のようになります。
(1) 出願商標の決定
まず、出願する商標を決定する必要があります。あまりにありふれた名称を商標出願しようとする人がいますが、そのような名称について特許庁が一私人に独占権(商標権)を与えるわけにはきませんので、当然拒絶の対象となります。
ですので弁理士と相談の上、商標の選定作業を進めるようにしましょう。経験豊富な弁理士の中には、ネーミング・ブランディングの相談も受け付けている人がいますので、一度探してみるといいでしょう。また、日本弁理士会は各支部においてほぼ毎日無料相談会を行っていますので、このような機会を利用するのも有効です。
(2) 指定商品・指定役務の決定
出願商標をどの商品・役務に使用するかを考えて、指定商品・指定役務を決定します。予算にもよりますが、将来使用する予定がある商品等もできるだけ指定しておく方がよいでしょう。なお、指定商品等の数が増えると「類似群」というグループ数も増えて新たな拒絶理由の対象となり得ますので、このような観点からも弁理士に相談して進めるのが得策です。
(3) 出願
商標及び指定商品・指定役務が決まれば、できるだけ早く出願するです。先願主義の下、類似する商標や類似する指定商品等に係る出願では、先に出願した方が登録されるからです。なお、同日では時間が早い遅いによる優劣はありません。例えば、同じ日であれば、午前に行った出願も午後に行った出願も対等に取り扱われます。
(4) 審査
特許庁の現在の審査実務では、出願から約4~5ヶ月後に審査が行われることが多くなっています。審査官が拒絶理由を発見しなければ、登録査定となります。逆に拒絶理由を発見した場合は、拒絶理由通知を発行し期間を指定して出願人に反論や補正の機会を与えます。
出願人が対応することにより拒絶理由が解消された場合は登録査定になり、反論等を行っても拒絶理由が残ったままであったり反論等を行わなかった場合は、拒絶査定となります。拒絶査定となった場合は、①あきらめて別の商標について再出願するか、②拒絶査定不服審判を請求して権利化を図るか等の措置を採ることができます。
(5) 登録料納付
登録査定の謄本の送達があった日から30日以内に登録料を納付すれば、商標が登録され商標権が生じます。日本における商標権の存続期間は登録日から10年です。創作法である特許等とは異なり、商標権は更新申請により存続期間をさらに10年ずつ延ばすことができます。
6. まとめ
いかがでしたか。一般の出願人が、商標の機能まで考えることは少ないでしょう。ただ、何故商標を登録しておいた方がよいのかについて考えるきっかけになったのではないでしょうか。良い商標を登録して、事業拡大の強力な武器にしていきましょう。